満足度★★★
鑑賞日2020/01/25 (土) 14:00
2016年末に、東京文化会館でオペラ「眠れる美女」を観劇したことがある。この時は、日本・ベルギーの友好150周年を記念して上演された。長塚京三と原田美枝子が日本語パートを、オペラ初挑戦で務めるということだった。新作ではなく、果たして過去に日本語パートなるものが存在していたのかどうか、それなりに川端康成の原作をよく咀嚼していたと思った。しかし、一方で日本語パートとベルギー語パートでは、どうも美術、演出共に乖離が見られ、前者ではあくまでも日本的な様式美を追求しながら、後者では神話的な装飾が施されており、双方のセリフの受け渡しに多分な違和感を覚えたのを記憶している。
さて、今回も川端康成オペラ、新作である。「眠れる美女」しかり、この「サイレンス」しかり、西欧人は川端的な美意識が好きなんだな、と思う。むしろ現代日本人には、この美意識(他に、谷崎潤一郎や三島由紀夫を加えてもよい)は、どう感じられるのだろう、相当な違和感はないだろうか。
上演はフランス語。最近、シアターXでは字幕上演をやめたのだが、本作品だとタイトル通りのオペラなので寝入ってしまってもおかしくないだろう。とはいえ、字幕のみならず、舞台後方に投射される登場人物の心象風景も追いながらの観劇は結構忙しい。それはそれで、サイレントなオペラは疲れを招き、睡魔を誘うのだが。
観ていて、けして悪い作品というわけではないが、鎌倉の奥地にフランス人がたむろする違和感と、なぜオペラなのかという手法への疑問とが渦巻き、うーんと唸る1時間そこそこ。何を見せられたのか。キョトンとするだけ。