酔鯨云々 公演情報 文化庁・日本劇団協議会「酔鯨云々」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/02/13 (木) 19:00

    2018年「日本の劇」戯曲賞最優秀賞受賞作品。
    重いテーマを個人の感情に引き寄せるのは
    勢いのある高知弁と畳みかけるような台詞。
    ところどころにクスリとさせるユーモアを差し込みつつ
    自分はどちら側につくだろうと考えさせる。
    キャラと言葉は生き物であり、どちらも土地に根差している。
    それを強烈に印象付けて素晴らしい。
    中屋敷さんの演出がまた秀逸。

    ネタバレBOX

    舞台中央に旭日旗の柄、真っ赤な上下の若い男が登場する。
    この赤い男は、人々が集まる料亭の座敷の中央に陣取り
    膝を抱えて話を聴いていたかと思えば
    人の話に合わせて口パクで台詞をなぞったりする。
    他の出演者からは見えない体の、不思議な存在。

    死刑制度が廃止されて8年、犯罪被害者や遺族の会、そして世論の中から
    「死刑が無いなら自分が犯罪者となって復讐する」
    という声が上がり、ついに“仇討ち”の復活を望むようになる。
    出来た法律が「生命再興法」という合法的仇討ち。

    高知県で起きた無差別殺人事件の遺族が料亭に集まり、
    仇討ちに誰が志願するかを相談する。
    反対する者と激しいやり取りが続く中、まだ来ない一人に
    志願させようと画策が始まる・・・。

    受刑者と遺族は、白装束に着替え帯刀して向き合う、という
    何とも古風な方法が可笑しい。
    おまけに仇討ち志願者はクーポン券がもらえる、とか言うので
    結構、国が考えそうなことだと笑ってしまった。

    高知弁にはストレートな物言いが良く似合う。
    本音以外口にするものか、という力を感じる。
    キャラも強いし口調も強い。
    役者さんは疲れるだろうな。

    ラストの“天皇降臨”には思わずポカ~ンだったが
    考えてみれば仇討ちといい、志願の押し付け合いといい
    極めて日本的感情のような気がする。
    そういうことは国が法の下でやればいいのに、
    的なところも含め。
    天皇の登場はその象徴のようなものか。

    亡くなった方のプロフィールを丁寧に拾う
    新聞の社会面が示すように
    日本は死に対してとてもウエットだ。
    義理人情や自己犠牲、そして究極は“お国のために散る”・・・。
    そう考えるとあのラストシーンは
    そんな日本人を揶揄しているように見えて来る。

    中屋敷さんの演出がとても面白かった。
    赤い男が、見えない存在としてずっとあの輪の中に居る。
    加害者であり、被害者であり、日本人であった。






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