舞台「盆栽」 公演情報 ALPHA Entertainment「舞台「盆栽」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     隣室との壁が薄い為、隣りの住人の有様が直ぐに知れてしまうような集合住宅に住む夫婦の部屋(妻・編集者、夫・フォトグラファー)にはお隣さんが毎日のようにやってくる。(追記2020.2.10 0:14)

    ネタバレBOX

    こちらの亭主は企業勤めの中間管理職、女房は専業主婦だが、彼女も盆栽に興味を持ち5000$で一鉢購入し到着を待っている他、風水にも凝っている。この2組のカップルの他に、今度は英国の航空会社オーナーの子供(兄・妹)が上手隣人として加わった。兄は心気症を患っているのか、それともプレシオジテからか、他人の家にズカズカ上り込んでいるずうずうしいキャラの癖に椅子に掛ける際、必ずハンカチを尻の下に敷いて着座していたのだが、妹が機内に「ナッツが無い」と騒いで彼女の搭乗便はナッツを調達せんが為に空港に戻らざるを得なくなった、とのニュースで一躍その名を世界に知られることになったナッツ姫の醜態を晒してからは心気症的症状が出されなかったことを観ると、ブルジョワの貧乏人に対する差別意識とプレシオジテに過ぎなかったことが分かるなど可なりヨーロッパ的な感覚も取り入れた面白いコメディーだということができよう。因みに彼らの資産が875億円程度でしかないとすれば、アジアの金持ちレベルに合わせているのであろうし、ナッツ姫の話は韓国であった航空業界オーナーの娘の話をパロっているのは無論である。
     この3カップルのうち唯一のサラリーマン家庭。中間管理職・下手主人の様々なとりなし総てが八方美人的で主体性が無い、と非難される下りが、実に日本の社畜等のみならず主体性を隠し、寄らば大樹の陰と周縁に自らを合わせ続けることしか考えることのできないように訓練されたのみならず、訓練されていることすら忘れ果てて、己の立場がどのような人間的価値を守ろうとして取られているのかについての自己弁護すらできない日本人と、少なくともその程度のことはしようとするアメリカ人との差でもあろう。一方、収奪のみに明け暮れるグローバリゼーションの央に在って被雇用者として生きる我々の抱えるアンヴィヴァレンツ自体が我々多くの者に自明で無くなっているのは、無論我々自身の堕落懶惰の必然的帰結と考えねばならない。登場人物6人のうちまともな人間は1人もいない点に喜劇としての今作の真骨頂がある。念の為に付け加えておくと、無論まともな人間とは、己の自由の為に戦い己の実存と向き合い続けながら、自己検証し己の人としての進路を決定実践して行く者である。にゃんちって。

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    2020/02/09 12:45

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