ショート7 公演情報 DULL-COLORED POP「ショート7」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    知的にバカをやる脚本の、ギリギリ感が魅力
     谷賢一さんの作品は豊かな知性と、パンクの精神を感じさせるテキストが大きな魅力だと思います。今公演でも、言葉に対する尋常ならぬこだわりが感じられ、充実の観劇になりました。

     DULL-COLORED POPでは、役者さんは決して読みやすいとは言えない長いセリフ(詩情たっぷりの状況説明や、難しい専門用語が散りばめられた感情の吐露など)を、読みこなすことが求められます。作・演出家が当然のように役者に負荷をかけ、役者もそれに全力で応えるという、演劇に対するひたむきさが伝わってくる作品群でした。

     ただ、その高くかかげた目標にたどりつけていたかというと、まだもう一歩足りなかったのではないか、というのが全体についての感想です。また、この3年間に上演された短編戯曲7本の中では、やはり最近書かれたものほど面白いことは否めず。時代の流れは早いですね。

     あくまでも個別の短編を7つ集めた公演だということで、作品終了ごとに装置変更の休憩が挟まれていたのは潔いと思いました。観客も遠慮なく頭の切り替えができます。
     装置を動かす舞台監督さん(?)が黒装束だけど金髪で、とても目立っていました。演出意図なのかしら(笑)。
     終演後のトークイベントでは、演劇についてのディープな話が聞けて面白かったです。“キャバクラ”のぐだぐだ感は好みが分かれそう。様式は毎日変化していきそうですね。

     Aプロは心の暗部を深くえぐるような題材が多く、休憩があったおかげで気持ちを楽にして拝見できました。Bプロの飲尿ミュージカル「エリクシールの味わい」は出色。バカ笑いしながら考えさせられました。生演奏が素晴らしいです。オススメです。これから予約される方は、A、Bの順番でご覧になるのが良いのでは、と思います。

    ネタバレBOX

     Aプロは女優さんの体の露出がかなり大胆です。美しいので純粋に眼福ではありますが、そちらにばかり集中させてしまうのはもったいない気もしました。Bプロはとにかく「エリクシールの味わい」が突出しています。
     A、B両方とも最後に1人芝居を持ってきていますが、Aプロは「15分しかないの」、Bプロは「エリクシールの味わい」で終わってほしかったですね。

    ■Aプログラム
    ・『ソヴァージュばあさん』
     演出、出演者違いで数回拝見した戯曲です。3人の敵国兵士と仏頂面のソヴァージュはあさん(堀川炎)が、数ヶ月の同居生活を経た末に・・・。

     言葉が通じない人々(しかも敵同士)が食事を通じて心を通わせていくお話なので、ダイニングテーブルと料理のセットが効いています。フランス語とドイツ語の通訳をしていた兵士(和知龍範)が、冒頭のセリフを手帳を読むように語っていたのが良かったです。

    ・『Bloody Sauce Sandwich』
     姉(佐々木なふみ)の部屋に転がり込んだ妹(ハマカワフミエ)。彼女はある妄想に取り付かれていて・・・。

     子供を堕胎してしまった若い女性の苦しみ。水子が堕胎医(千葉淳)の姿で登場するのが空恐ろしい。
     私が座った席のせいもあると思いますが、姉役の佐々木なふみさんの美しい胸元ばかりに目が行ってしまいました(笑)。ここまで来るとやりすぎなんじゃないかと思いますね。ブラウスのボタンが数個はだけてるぐらいのチラリズムを希望。

    ・『15分しかないの』
     大手商社で働く27歳の女性サラリーマン。深夜に1人暮らしの家に帰宅して、寝る準備をするまでの15分だけが、自分の自由時間なのだ。

     サラリーマン本人(堀奈津美)と、彼女の中にある相反する2つの感情(桑島亜希、境宏子)の合計3人で、1人の人物を演じます。モト彼(千葉淳)からの電話への反応がそれぞれバラバラだったり、重なったりする演出がとても面白いです。ほぼ正方形のステージを立体的に使ったステージングも見ごたえがありました。

    ・『アムカと長い鳥』
     田舎に嫁いで暇をしている若い主婦の独白30分。キャミソール姿での清水那保さんの1人芝居です。

     初演の方がもっと引き込まれたように思います。演技はまだまだ上を目指せる感あり。あやうさが足りなかったのかも。
     白いベビードール風キャミソールが似合う若い女優さんっていいですね。ショーツはお尻にぴったりフィットするタイプの方が私好みです。

    【アフタートークイベント】
     4/29(水)出演:谷賢一 中屋敷法仁(柿喰う客・代表)

     「演劇は21世紀に生き残れるか」という壮大なテーマを掲げ、谷さんと中屋敷さんが本気で話されているように感じ、しかもお2人のご意見は対立するものでもあったので、非常に面白かったです。
     初日ということもあってか、キャバクラ嬢に扮した女優さんたちが所在無さげでお気の毒でした。どうせなら本気で議論に参加して欲しかったです。改善を希望。


    ■Bプログラム
    ・『息をひそめて』
     同姓しているカップル(堀奈津美&佐野功)が暮すアパート。男は女が浮気をしているのではないかと疑心暗鬼になり、床下に隠れて女とその友人(田中のり子)との会話を盗み聞きする。

     畳がパカっと開いて男が出てくるのが面白いです。わざわざこのためにセットを作られたんですね。ビーフシチューを食べるのか食べないのか・・・で終わる最後の空気には、岸田國士作品のような情緒が感じられました。ただ、女2人の会話はいやに早口で、感情表現がはしょられているようで残念。

    ・『エリクシールの味わい』
     さまざまな女の子の“尿”を用意しているバー。飲尿フリークの男(小林タクシー)が1杯ずつ味見をしていく。

     絶品でした(笑)。始まる前のセットチェンジの時に、スポットライトが客席に2灯も用意されたところから、ものすごく可笑しかった。キーボードの生演奏&ボーカル(伊藤靖浩)もノリノリで素晴らしいです。
     男が心奪われたエリクシール(万能薬・不老不死の薬)と呼ばれる尿は、精神を病んだ女(岡田あがさ)のものでした。テーマが飲尿なのに、変態のダメ男と薄幸の美少女の純愛物語にまで昇華しました。「50cmだけ離れて。ずっと一緒に。」にうっとり。

    ・『藪の中』
     芥川龍之介原作『藪の中』の翻案・舞台化。

     たった1人で30分間、7役を演じ分けていくのは大変なことだと思います。堀越涼さんは花組芝居の役者さんなので、歌舞伎っぽい演技がポイントにもなっていました。原作の持ち味そのままに上演したようですが、構成に変更を加えても良かったのではないかと思います。


    【アフタートークイベント】
     4/30(木)出演:谷賢一 船岩祐太(演劇集団 砂地・演出)

     初日とは違って、キャバクラ嬢(?)の皆さんは床に座ってお話に参加。「ポストモダンって何ですか?」という質問が良かった。

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    2009/05/01 17:02

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