満足度★★★★
何がしあわせなのだろう。もう一度、会いたいと思う事は、エゴなのだろうか。突然の別れは、人の心を揺れ動かす。わたしは、もし、会いたい人に蘇って逢えたら、幸せだろうか。生きる時間って、終わってから気がつく事ばかりなのかな。私は、まだ、近しい人の死を体験した事が無い。死に関しての考え方も良くわからない。けれど、早すぎる別れであれば、ある程、探し求める気持ちは、漠然とだが感じる。わかるのではない、感じだけだ。わかるのは、当事者だけだ。思う気持ちが大きく、だからこそ、相手の事を深く思い、決断する。その思いは、死者も生者も関係なく。
今作の、ラストに向かいながら
「神様は探していた人に逢えたのだろうか?」と思っていると、静かに答えが語られた。
過去作も色々な提示が物語の中であったが、今作は、ある種、
永遠に寄せてかえす、波際のように、穏やかな愛を感じた。
永遠に、終わることのない、優しさと、色々な愛情を。
また、観に来よう。
演者のそれぞれの役回りが適材適所というか、東京のキャスティングしか拝見してないが、良いと感じた。また、個々の方については、感想を。
比較的、特殊な役回りだった渡辺芳博さん。既にビジュアルは前出なので、観た方も多いと思う。白塗りで、飄々と、going My wayといった感じだが、冒頭と、ラストで「彼」の本当がつながる。
特に、白塗りであるが故に、目の色の変わり方が良くわかる演技だった。「神」が「彼」になる時、愛おしい者に対する気持ちが目の光に宿り、あのラストへ繋がってゆく。
劇中、ほろっとする場面が幾つかあり、ラストで、どっと、涙が出てしまった。
赤いお手紙は香港とかのやりかたのよう。
日本だと、青森や、山形などであるみたい。
劇中の「匂い」にポイント置いてる役の設定が興味あった。「生」に関しての特徴的なところが「匂い」というのも、観劇してる私にも身近で物凄く共感できるポイントだった。死者の世界は、無味無臭なのかもしれない。
個人的に、ラスト近くの女性たちのあの衣装が、もう少し、違うものだったら、良かった。むしろ、普通の衣装ではなく、大きな布をドレス風の方が簡易だけど、ドレスぽさがあったような気がする。あの、仕立てかたは美しくないドレスだった。大事な時に着るという設定なら、考えた方がよかったのでは。
二回目。高橋玄太さんの父親の言葉が、しみじみと心に広がる。実直な彼のキャラクターが、台詞をより、言葉として届けてるなと感じた。親子の愛、恋人同士の愛。生きているもの、死んでいるものの、想いが沢山あそこにはある。でも、きっと、語られなかった言葉が、あの村にずっと、ずっと、風の中や、波の音の中で聞こえているのかもしれない。それは、最後の瑞穂の言葉のように、語られたけど、波の向こう側に消えたみたいに。
でも、きっと、届いてる筈。少し立場が他の人と違う役が、杉浦一輝さんの村長さん。彼が、立場上、きっと、表だって言えなかった言葉も、無念さを残して死んでいったヒトの正直な気持ちだろうなぁと思う。
(未来)を語ることが出来ない悔しさ、切なさ、嫉妬の心を持つのは、綺麗事ではなく、そう思う。
時間が止まったままの人々。
時間が流れてゆく人々。
同じ方向を見ていても、いつかは、歩幅がずれて、手を繋いでいても、その手は、ほどかれてしまう
決断をする。
相手を想い、決断する。
坂本健さんが演じた彼は好きな人にまっすぐ、感情をぶつける。甘えん坊なところも、坂本さんの持ち味を生かしたキャスティング。
湯浅くららさんの演じる彼女は、過去にきっと、辛いことを背負って、彼と出逢うことで救われたのだと感じた。素直な二人のラブラブな感じは観ていて、微笑ましい。湯浅くららさんも、心が強い、それでいて、周りの人を明るくする役を好演。柏進さんの演じるちょっと、優柔不断な彼と、妙齢の彼女、都倉有加さん。柏進さんの両親が「未来」のある二人に語る台詞がとても、良い。婚姻の事だけではなく、広い意味での「人」と「人」の繋がり方の指針のようなものを感じ、あの村の在り方をも、表しているようにも取れた。小山あずささんの演じる母親は、高橋玄太さん父親との対比が面白く、それでいて彼女なりの世界で、また、新たな歩み出しを、高橋玄太さんの父親としていこうというポジティブな描き方が良かった。内田敦美さんと水原睦実さんの親子。現代の多くの人が抱える、そして、誰もがそうなる事が考えられる事柄が描かれている。その二人を支えている不器用ながらも、優しい北村海さん。劇中での、老いによる問題をきっと、彼女一人ではあのような決断は出来なかったと思う。きっと、彼がいたから、母親の未来を、そして、自分がゆっくり、待つ事を決められたと。小河智裕さんの役柄は、ある種、一本線を引いて外からの視点であの村を、人々をみている。とても、私・観客「生きてる」側の世界の役だった気がする。外から来たという設定もそう思わせたと思う。磯部莉菜子さんが、点と点を結びつける役柄だったのではないだろうか。磯部莉菜子さんの瑞穂が、居たからこそ、あの村が生まれた気がする。それが、幸せだったのか、どうだったのか。答えは、わからない。ただ、あの時間、あの場所には、あの村は存在していた。そして、もうすぐ、あの村が消える。
千穐楽が終わり、色んなチャレンジの公演だったのかな?と部外者からみてると、そう、感じられた公演だった。
ぽこぽこクラブだけでは、出来ないことと、ぽこぽこクラブだからできたことがミックスされた今回。旗揚げから観ている
と、過去作はぽこぽこクラブのとんがったやりたい事、実験的なこと、
それぞれのホンを書くヒトの欲求が強い作品で、今回は、それとは違う、より、物語になっていた。ある種、素直な物語になっていたと、勝手に私は思う。
ぽこぽこクラブとしては、色々思う所もあると思いますが、これだけの沢山のお客様の声があるという事、とても、とても、素敵な公演だったと思う。
観劇者と「家族」「恋人」など共通項が多くあり、観ているヒトが自分の物語として観たかもしれない。
公演を観て、観たヒトが個々に想いを持ち帰る。
大事なヒトを想いながら、自分の想いを振り返りながら。