満足度★★★★
花組芝居の歌舞伎名作一気読み。全部やれば一日では終わらない義経千本櫻は、大歌舞伎でも始終上演されるが、いつもみどり。ここは川越上使からはじまって、鳥居前、渡海屋、大物浦、いがみの権太、すし屋、四の切りまで全部ある。ここは、あの・・・。と記憶をたどって見ているうちに次へ行ってしまう忙しさで三時間弱。
菅原伝授手習鑑 仮名手本忠臣蔵に続く名作ダイジェストで花組風に上手にまとめてある。狐忠信の袴の裾を長くしてしっぽにして捌くところなどうまいものだ。下座も巧みに入れていて劇場のスケールにあっている。
伝統演劇を果敢に若者演劇に取り込んだ先覚者としての花組芝居の功績は大きいが、その後、野田秀樹が頑張り、一方では木の下歌舞伎やKUNIOが出てくると、花組芝居は先行しただけに分が悪い。ここでも加納をはじめ、長くやっている俳優たちは花組風を体得していて独特の演技で面白い。多くの俳優が、小劇場や商業演劇でも活躍しているのもうなずける。ダイジェストもなかなかこうは思い切ってできないだろう。
しかしそれが、大歌舞伎のように時代を超えて受け継がれ再生するか、となるとどうだろうか。これはこれで面白いのだが、時代がそれを受け入れるかどうか、ここにも「舞踏」や「テント」と同じ先覚者の大きな課題がある。