満足度★★★★
当日は電車検索の入力時刻を誤り、余裕ぶっこいて本命と次点共に逃し、急遽三番手のこちらを観劇。
内容全く未知数(舞台スタイルは予想の範囲)、「ヤポネシア」という概念を提唱した(よくは知らないのだが)島尾敏男にまつわる作品という事ではるばる板橋へ。
また前回の「狂人と尼僧」で怪演を見せていた葉月結子(先刻シアターXで予期せず舞台上に発見したが普通に演じていた)を見る楽しみもあったが期待通りであった。
ただし舞台はリアル・ナチュラルな喋りは皆無、二組の男女の会話(一応そのようにも見れる)を一人の持ち時間長く詩のボクシングよろしく力強く金梃子を押し付けるように発する。単調と言えば単調だが「気」を張り詰めた演技の成果は4名とも。
なお男女二組はそれぞれ交わらず(一方は島尾+夫人らしいが一方は不明)、今どちらの組の会話であるかは照明等で分るようにはなっている。前作同様に、背後では時計の無慈悲な秒刻が鳴り、舞台は抜き差しならぬ空気を醸しているが、どういうドラマであるのかは良く分らず、しかしそれでも良いのではないかと思ったりもする。
夫婦の気持ちのすれ違い、妻の精神的逼迫が、目の前の役者の姿から窺えるが、しかしその具体的な原因や、解決策を考える材料が説明される事はなく、人物の心模様が何やら言葉を連ねているらしい「声」に乗って伝わって来る、それ以上のものではない。
今なぜこれをやったのか演出者に訊いてみたい気がするが、劇場では思い至らなかった。(65分)