「冒した者」2019 公演情報 劇団速度「「冒した者」2019」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     2018年の利賀演劇人コンクールで優秀演出家賞・観客賞受賞作に手を加えて京都・東京の2都市で公演される今作。三好十郎の「冒した者」が原作である。(原作は読んでおいた方が良い。かなり異色な作品だからだ。華4つ☆追記後送)

    ネタバレBOX

    三好自身、原作発表時にかなり実験的な作品であると断っているように1952年当時原作の持っていた革新性は、一般的に捉えられていた劇作家とその作品との関係を画するものだったようである。無論、それでも作家謂わんとすることの内実を汲み取ることのできる上質な鑑賞者は居た。それらの鑑賞者は時代の本質を作家同様に見抜き、理解するより悟ってくれるだろうと三好自身が考えていたことは、示唆的である。元々革新的な作品であった「冒した者」の原作をベースに上演するに当たり、この劇団は矢張り少し変わった形で取り組んでいる。劇団メンバーからして通常の劇団コンセプトの劇団では無い。構成・演出をした野村眞人氏は役者として他劇団に客演したりもしているが、演劇以外にダンス、陶芸、アニメーションなど多様なジャンルの表現者が関与し、取り敢えず劇団というスタイルを採用している。今回の舞台美術は、陶芸家が関わっているので焼き物を作るのに用いる生土(陶芸用粘土)を約2トンも使って舞台やテーブル等の舞台美術を作っている。パソコン画面に映ったフライヤーを見て自分がトンブクトゥーの建物群を想像したのはこの為であったと納得した。何れにせよ、アートの大切な表現方法の一つに、それまで無かった物や概念の組み合わせによって新たな美意識や観念を創造するという方法があるが、この方法は単に奇を衒うという悪趣味のみならず作家など表現者の採る位置や狙い、見識などによって千差万別。またこのように千差万別の表現を取れぬような不自由な人間に表現者たることなど不可能である。閑話休題、兎に角、若い才能が大きな仕事を成し遂げた大先輩の作品と格闘して作り上げた作品だ。

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    2019/12/07 09:21

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