孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)―日向嶋― 公演情報 国立劇場「孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)―日向嶋―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2019/11/22 (金) 12:00

    座席1階5列9番

     「大仏殿万代石楚」の一、二段目を簡潔にして、四、五段目を省略、三段目「日向島」を中心に構成し直した通し狂言。
     二幕目から登場の景清は、その名に轟く勇猛果敢な出で立ちで、数多の景清伝説に違わない暴れっぷり。ざんばら髪になったところからが見せ時で、太刀を持たずとも、その腕力にものを言わせ、数多来る武者どもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。しかし、頼朝へ迫るもそれまで。

     と、ここまではまさに荒事振り。頼朝からの士官の誘い、頼朝の寛大な態度に心打たれながらもそれを断り、自らの怒りを封印するとして両目を抉る。
     数々の景清物に出てくる、剛毅で人情に篤い「男」景清なのだけれど、三幕目から和事風に場面転換すると、物語のトーンが全く変わってくる。(まあ、歌舞伎の通し狂言では、よくあることではあるが)
     四幕目に、景清再登場。盲目となり乞食をしている景清。そこに景清娘の糸滝が訪ねてくる。ここが「日向島」。生後離れ離れの父親に会い、身を売った金を携えて父の窮状を助けようと思い来た糸滝、それを知らぬ景清は糸滝に自らの立場を気遣わせまいと彼女を思いつらく当たり追い返す。しかし、残された大金と共にあった文書から、糸滝の身売りを知った景清は、景清を監視していた隠し目付からも諭され、頼朝の下に糸滝ともども帰順を決意する。出立する船に皆が乗り、舞台奥から前面にせり出してきてEND。

     って、景清って何て要領悪いの?あるいは、困ったちゃんなの?(確かに、こうしていろいろ拗らせちゃう人物像は、歌舞伎演目に多いのだけれど)結局、頼朝に仕えるなら、両目抉る必要ないし、糸滝身売りすることなかったし。初めからそうしろよって話でしょ。
     
    歌舞伎十八番の「景清」他、観劇はないが同「関羽」「鎌髭」などに出てくる豪放磊落、天下無双の剛力、義理人情に篤い好漢としての景清とは、どうも趣が違う。
     そうした景清像を期待していたから、三幕目以降の地味というか、盛り上がりがない展開が、どうも物足りない。景清親子の対面こそ、やや心打たれるものの、親子としての背景が、この舞台では全く描かれていないので、景清の気持ち、糸滝の気持ちに寄り添うことができずもどかしい。せっかくの通し狂言なのだから、もう少し他の景清物もアレンジして、静と動、柔和と剛毅、繊細と大胆、メリハリのある筋立てにして欲しかったと思う。

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    2019/11/28 09:49

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