世界はあまりにも 公演情報 劇団 脳細胞「世界はあまりにも」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     脚本、演出、演技。舞台美術何れも素晴らしい。無論、効果もぬかりない。

    ネタバレBOX

     観終わって、尻切れトンボのようなこのタイトルの絶妙に感心。
     舞台は山奥の広大な土地に建てられた別荘。養蜂業を営む森尾社長一家は携帯の電波も届かないこの僻地に年に一度保養に来る。台風が近づき大雨と強風に曝される中、友人・井川と釣りに出ていた息子・旬が帰宅するが、車が故障して立ち往生していた平山一家を直ぐに井川が案内してくるという。
     ところで金持ちにとっての地獄は、我々貧乏人のそれとは、無論質が異なる。貧乏人の地獄は日々体験していることだから今更論う必要もあるまい。では金持ちにとって耐え難い地獄とは何か? 病? 稔らぬ恋? それとも・・・。答えを書いておく。それは退屈である。人間は己が地獄から逃れる為なら基本的に何でもする。卑しい動物である。幸か不幸か、知恵を持っているから始末が悪い。おまけに金持ちはふんだんに富を所有し、富は他人を支配するに頗る有効である。そんな森尾家に世話になることになった平山家は、ミドルクラスだ。というのも平山は自動車メーカーの研究職だから。オーナー社長一族に対する、プチブルの差が実に上手に表現されていると同時に、金満家の謂わば社会階層としての性格も実に巧みに描き出されており、そのような金満家に対する雇われ人のコンプレックスも、そしてそのようなことにコンプレックスを持たざるを得ない階層に属せばこそ、更に弱い者に対しては容赦せぬ差別的言辞を平気で行使する鈍感も描き込まれている。今一世を風靡する新自由主義とは、やや異なるものの、資本家階層の大衆との距離の取り方の上手さ、絶妙、そして諧謔や利用の仕方をも見事に表現した役者陣の演技も冴えたものであった。ネタバレになり過ぎるから書かなかったが、面白味は、森尾家の面々が退屈凌ぎに何をどのようにしたか、にある。

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    2019/11/22 23:24

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