満足度★★★★
おもしろかった。冒頭、ひとが宙づりになって、溺れているような場面から始まる。METの「ラインの黄金」で、やはり舞台の空中をラインの精たちが泳ぐかのような、ワイヤーを使った演出があったが、それを思い出した。意表を突く幕開きだ。その意味も後でわかる。
主人公は、夏の家族キャンプから、突然未来の宇宙船の中にとんでしまう。その場面の驚きと、ありそうだと感じさせるリアリティーの醸成はすばらしい。さらに異なる星、異なる時空へと飛びながら、この出来事の謎が次第に分かっていく。そこは説明なのだが、必要なことだし、物理学者の母親が息子に教える形なので、違和感はない。
砂の惑星にとんでしまうシーンはなんか変な感じがしたが、全体としては、とんでもない大ウソを、平然とリアルに演じる前川マジックが結晶した、見事な舞台だった。
また、気候変動への危機感も織り込んでいる。私は、設定の一つと思ったが、一緒に見た友人は、この現代の課題に真正面から取り組む姿勢に「前川氏、おそるべし」と感動していた。