8人の女たち 公演情報 T-PROJECT「8人の女たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2019/11/14 (木) 14:00

    座席B列11番

    推理劇なので、念のため全てネタバレにしておきます。

    ネタバレBOX

    推理劇なのだけれど、同じロベール・トマの「罠」に比べると、サスペンス度も衝撃度も正直物足りない。殺人が起こったとされるのが朝4時頃、死体の発見が朝10時頃、この僅か6時間で、あれだけの細工を考え実行に移すなど、どう考えても無理。何日も練り上げられた用意周到な計画であるべきだ、と思う。だって、殺人を犯すこと自体、「その時点」で思い起こされているのだから。

     ラストも自白というのも(「罠」はこの自白という結末が凄く生きている)、肩透かしかな。せっかく、多くの巧妙な仕組みを入れ込みながら、解き明かすような楽しみがないし。

     だから、どちらかといえば、推理劇として楽しむよりは、悲喜劇(といっても、非の部分はラストだけなのだけれど)として楽しむのが正解かもしれない。
     8人の女性が殺されたマルセル(館の主人)との関係で、自分の秘密を次々と明らかにしていくのは、それが欲得にまみれたものであるだけに滑稽だ。殺人が起こり、館に閉じ込められるという極限状況で、8人が相互に関わり合い、その人物の本性らしきものを露呈していく。冒頭の、クリスマスを家族で過ごそうという平穏で微笑ましい家庭像が、どんどんと壊れていく様は、プリーストリーの「夜の来訪者」のようだ。多分にテイストは違うが。

     そして、密室劇で登場人物が限定されている上に、全て女性という構成は、役者相互の立ち位置にバランス感を与え、女優たちの演技合戦という色合いを強くしている。ロベール・トマの本戯曲における眼目も、そちらに重きがあったのだろう。ただ、推理劇作家として名を成していた彼としては、世間の期待に応える意味と、殺人という異常な事態が彼女たちのエゴを露呈させる装置として有効だと考え、こうした形式になったのだと思う。

     8人の女優さんは、それぞれ役柄に適した個性で、1つ1つの対立図式の中で見事に役を演じきっていた。見せ場を各自意識しながら、変化する心の機微をうまく表現していたと思う。ギャビー役の石井麗子とピエレット役の名塚佳織の対決は、思わず笑いを誘ってやまなかったな。
     
     最後に、「8人の女たち」なのだけれど、次女カトリーヌは植田千尋の容姿と相まって、
    エロ本や飲酒、煙草など、どうしても男の子にしか見えなかった。悪いというわけではなく、
    男の子だとすれば、父親マルセルの気持ち(この事件が起きた要因)も理解しやすかっただろうし、マルセルも思春期を迎えた息子に対するエロ本や飲酒、煙草などへの興味にも理解を寄せたのではないかな、と思った次第。だとすれば共犯意識も醸成されやすかったのだろうと。でもそうすると、「8人の女たち」ではなくなるんだけれど。

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    2019/11/14 18:32

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