ローマ英雄伝 公演情報 明治大学シェイクスピアプロジェクト「ローマ英雄伝」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    二、三年前に見逃し、今回漸く拝見した。粗筋も知らない2演目だったが、何処を伐っても間違えようのないシェイクスピア劇。
    今年16回目になる一大プロジェクトはプロも関わって大学の伝統行事の感。無論、制作責任者、演出とも現役学生で、会場の雰囲気から俳優らの立ち姿まで、やらされ感ゼロ。入場料もゼロ「ただ観ていただく」スタンスで、採算性に取られるエネルギーを作品(公演)に集中してやりきっていた(そこだけは学生演劇。贅沢)。大型のホールは新国立中劇場くらいだろうか。だが元気よくやってるので二階席でもよく見え、聴こえた。

    舞台の方は、古典なれば上演主体なりのやり方、その時代と場所なりの切り口を見たい思いがあるが、(自分の中に比較対象がない事もあるが)溌剌とした作品紹介を有難うという所であった。ローマに疎かった(塩野七海読まないし)自分には話じたい新鮮。興味が芽吹いた。シェイクスピア史劇の、史実と脚色の境界についても。
    上演順で言えば「ジュリアス・シーザー」は純然たる歴史劇であったが、「アントニーとクレオパトラ」がユニーク。始まりはエジプトにて、クレオパトラとアントニーの恋愛喜劇の様相(ここは演出かも)、第一部(シーザー)とガラリ空気が変わるのが良い。だがやがてローマ三頭政治の権力淘汰のシビアな局面へと一挙に変貌し(何かあるとすぐ戦争)、真顔な史劇のタッチとなり、最後はクレオパトラの高潔な死に終わる悲恋物。
    学生らは喜劇調において優れ、武勇を若い一途さで表現したが、人生経験が物を言う側面に弱いため芝居の輪郭はその分だけ平板にもなるが、主役のうちクレオパトラ役は闊達なコメディエンヌぶりを発揮、人物の幅としてはアントニー役が若年なりに力演し、芝居を大きくまとめた(この役のサイズがそのまま芝居のスケールになる)。最後にアントニーから逃げ出すも悔いて自害に至る臣下イノバーバスの存在感もあった。
    恐らく他の臣下も同様、役者たち自身と役の年齢は近いせいだろう、人生の春を謳歌するはずの彼らが自刃する姿は妙に生々しい。理想や大義や倫理のために命を捨てる向こう見ずは若い世代の特権であり、社会変革の主役も同様の意味で若者であるはずのものなのだが。。(沈黙)

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    2019/11/11 11:14

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