終わりのない 公演情報 世田谷パブリックシアター「終わりのない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    2020年から、1000年以上経った未来へ、宇宙や空間をまたいで旅をしていく
    ハードSF、という紹介でいいのかな? 後述の理由でなんかちょっと無理
    だった…。メッセージが前に出過ぎて、もっと足元の大事な問題を流して
    しまっているように思えて、気になって仕方なかった。

    ネタバレBOX

    舞台は2020年8月の湖のほとりにあるキャンプ場。18歳の悠理は幼なじみ2人と、高名なダイバーと
    物理学者の父母とともに避暑に来ている。

    悠理には高校受験前、親密だった杏を妊娠させ、流産という結果に至らせた過去があり、その体験を
    きっかけに進学に失敗。フリースクールに通うも、自分がどうしたいのか、どうすべきなのか
    分からないまま、学校にも通わないニート状態になっている。

    もちろん、キャンプ場には杏の姿は、ない。私立の進学校に合格後、先述の一件もあって
    完全に交流が途切れているからだ。

    そんな悠理に突然両親の離婚の話が。なんでも父親は現在危機的状況にある地球温暖化を解決すべく
    政治家を志す一方、母親も政府系機関の量子コンピューター研究者の筆頭となり、互いに立場を
    考えた上での決断だという。「地球環境を真に解決しようとしている国はどこにもない」「自分たちの
    利潤のためなら未来なんてどうなってもいいと考えている」「資本主義を修正しないといけない」、
    演説じみたコメントを続ける父親を尻目に進むキャンプの準備。

    その最中、悠理は湖で泳いで溺れてしまう。そして、目が覚めたのは宇宙船の上、1000年以上経った
    3585年。地球は21世紀後半に起きた、地球温暖化に端を発する環境の激変による紛争で人類は3000年頃
    ほぼ滅亡し、ほんの少し残った金持ちたちの子孫が人類の住める星を探して宇宙探査を続けているという…。

    -------------------------------------------------------------------------------------------------

    なんだろう、上手くハマれなかった…。ちょっと前からのイキウメ/前川作品から漂っていた
    メッセージ性強めかつ自然中心的な傾向がここに来てグッと出たことにも違和感を覚えは
    したんだけど、それ以上に、杏の扱いはアレでいいのかな、って。

    杏って当時は女子中学生だったから、妊娠流産ってこちらが考えているより、ずっと心の傷に
    なったと思うんですよね。それをなんか「これでよかったんだよ」みたいな言葉しかかけて
    やれず、あげくに「俺はクズだ」って自己憐憫的に言う悠理が正直好きじゃなかった。

    でもまあ、それはまだいいんですよね。悠理も当時中学生だったって思えば、まだ飲み込める。

    だけど、いろいろと時を超えた体験をしてきて、人類一人ひとりが何とかすれば確定しない
    未来から最高のものを選べる、そして自分もその一人であり、「自分の面倒は自分で
    みられる」「ひとりでもう歩いていける」と宣言した成長後の悠理が、

    「杏に連絡してみたら?」って言われて、「ううん」って答えるのはなんか違うよ。
    そこをちゃんとケリつけてほしかった。だって、悠理は杏とのこと何も清算して
    ないから。思春期の多感な時期に自分が追い込んだ大事な子の関係を何も意味付け
    してないんだよね。

    なんかな、と感じた。こちらの目には、勝手に逃げて、勝手に成長して、勝手に
    清算した気になっているとしか映らなかった。杏が悠理の成長の踏み台の役割
    みたいになっててあんまりいい気はしなかったな。

    杏の妊娠流産設定ってこの内容だったら要らないよね。後半全然話に絡ま
    なかったし(というか、現実の杏自体、後半全然出てこなかったけど)、
    これだったらすれ違いで別れたでよくないか? って。

    なんかその後に地球環境のこと持ってこられちゃったから、大きいことを
    理由に、自分の向き合うべき問題からきれいに目をそらしたみたいな人に
    なっちゃったのが残念…。

    来年のイキウメもこの路線なのかな? 個人的には、過去の、人間そのものの
    どうしようもなさを描いた感じにしてほしいんだけど。

    0

    2019/11/09 22:04

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大