満足度★★★★
別役実作品の舞台化は、怖い、不気味、のパターンが面白い。「うしろの正面だあれ」「にしくむさむらい」「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」「病気」「あの子はだあれ、だれでしょね」。。
「会議」も、戦慄の(?)結末を迎える。そこへ至る経過がよく見えた。印象的な修了公演「るつぼ」を残した第12期生の一期下の13期生が、熟練でも難しい別役戯曲をきっちりと成立させていた。これが一つの嬉しい発見であった。
別役劇の顛末には、主体の意思薄弱によって不本意な展開を許し、不本意な結果を招き入れる(強い自己を持たず周囲に合わせて行動する日本人的習性により、手痛い仕打ちを受ける)ケースが多い。『会議』では、あるキーマンの「攻め」が顕著で、犠牲者にとっては抗い難い空気が醸成されて行くのが特徴。頭や腕に包帯を巻き、スーツを着てハットを被った、格好だけは紳士風の男は声に一定の告発トーンがあり、初めはありもしない暴行がここで行われた等と言い募っていたが、やがて場を支配し始める。男の主張に抗えない空気が作られ、ターゲットにされた男は、ある偶然(企みによるとも解釈可だがそれは排しておきたい)の加勢もあって一気に断頭台へ押し上げられてしまう。
(先ほどネットサーフィンで見つけたツイートを捲っていたら、「公式に認定された弱者が一番の強者」なるズバリな一文に出会った。)
他者を扇動し場の空気を作る冷徹なまでの強い「意志」が存在したら・・「会議」の登場人物らはそれなりに主体性を持ち、ラスト、悲劇的結末を前に「何故こうなったのか、それこそ会議で話すべきではないか」と説く者さえ居る。その彼らが、目の前で起きた殺人、死体遺棄、不訴追を許した経過は、この芝居自体、衆人環視の中行なわれた実験とも思える。控えめながら幾つかのポイントで不気味な音響が鳴り、これが演劇である事を思い出させるが、虚構の中の真実、信憑性に現実の断片が脳裏をかすめる。
この戯曲のようにあっと言う間に現実が相貌を変える瞬間が、いつ来ても不思議でない条件は一定整っており、さらに整えられつつある、その息苦しさが現実にある。