期待度♪♪♪♪
野田作品との接点をカウントすると僅か6ばかり。NODA MAPの舞台は一度だけ(『南へ』)、ピンと来なかった。戯曲としては言葉遊びのオンパレード『野獣降臨』、中編『赤鬼』を読んだが同じく。芸術系大学の学生が作った『半神』は面白かったがこれには原作がある。処女作『障子の国のティンカーベル』は毬谷友子の独演振りが突出。だのに何時の間にか「偉い人」と刷り込まれているのはやはり劇場芸術監督の肩書?・・と振り返ってみると一つ野田氏の才能を認めた作品を思い出した。SPAC『野田版 夏の夜の夢』。これも翻案だし宮城總氏の演出も良かったのだろうが、中々スリリングな翻案であった。
著名になるとタレント級の俳優を配し、それだけで満席になる(チケット捌けのスピードにはやはり芸術的評価が反映するとは思う)。知られている事の利点は大きく、キャラの理解を助ける面がある。『南へ』はステージから遠く何をやっているのか(人物の行動として)さっぱり判らなかったが、後で妻夫木だった、蒼井優だったと確認すると少し人物が近く見える(彼が彼女がああ演じていたという事はああいう意味合いだったんだな、とか、事後的でも理解を助けられる気がするのが不思議だ)。
でもって野田作品の印象は、フザケ通すスタンスで「真面目」を滲ませるのがズルい。フザケるならフザケ通せばいい、と思ってしまう。テーマ性が付け焼刃に感じられ鼻白む。観客に背徳的感情を抱かせないよう、日和っている。テーマがあってそれを思考の領域でこねている。だから劇の中身が「薄い」と感じる。
それでも、新作を毎回打ち出す野田秀樹の現在地を知りたいと時々思う。その周期がそろそろという感じ。(さんざんこき下ろしておいて何だ)