満足度★★★★
初ピープルシアター。名を知った当初からの「真面目」(硬派)のレッテルは当りであったが、その劇団なりのテイストを味わうのはやはり新鮮な悦びがある。船戸与一氏の原作も、他の著書も知らず、今作は三部作のラストというので、ストーリー理解面の制約は覚悟の上。後で知った所では、ここに登場する敷島四兄弟は(如何にも歴史上存在したっぽい軍人ぽい名前だが)原作『満州国演義』に出てくる架空の人物。
物語は満州建国から滅亡までの歴史を時間経過的には辿る。硬質な台詞を役者は口にこなして発語できていたが、人物関係図は中々掴みきれなかった。
が、場面処理をはじめ技術は高い。幾つものエピソードを短い場面で繋ぐ一定のテンポ感、人物繋がりのリレー風の場面展開(場面移行がスムースになる)、サスペンスフルな音響。目を引くのがまずシアターXのほぼ正方形に近い広いステージ一杯に広がるススキ野。やや高低差のある各所で、様々な場所のシーンを俳優の無対象演技で見せる。途中、ドラマを推進していたエンジンを切った静寂の中、敷島太郎(長男)と知己であるアウトローな男が身の上話をする(実は自分が君らと血縁であったその由来=そこに日本近代史を俯瞰する視点も)、リアルな時間がある。
エピソードの関係性は把握し切れなかったが、満州国を巡る歴史上の主要な事件が断片的に連なり、架空の人間の物語を借りながら歴史を叙述する仕立てとなっている。即ち、柳条湖事件、二二六事件、盧溝橋事件、関東軍、原爆投下、ソ連参戦、逃避行、シベリア抑留、帰国。。
原作に興味を持ち始めた。