満足度★★★★
『人間の條件』のような大河ドラマ。
ススキのようなものが数束ずつ舞台のあちらこちらに配置。それだけで風が何処までも吹きすさぶ満州の荒れ野を脳内にイメージ出来るのだから面白い。
次郎役の蓉崇 (ようたかし)氏が美声。台詞が耳に残る。『柳絮(りゅうじょ)〈柳の種子が風に乗って大空を彷徨う様〉のように生きたい』が馬賊の攬把(らんぱ)〈首領〉として生きてきた次郎の人生のテーマ。皆が破滅していく中、個人的には愛犬、猪八戒〈桶谷憲司氏名演〉の死が一番哀しかった。
DNAというカルマ〈宿業〉を背負った者達のあてどない旅路。船戸流『カムイ伝』なのだろう。抜け忍となった次郎が世界を裏側から覗き見る構成。まさにテアトルノワール。船戸物語のロマンティシズムとは、弱き者への慈しみと飽くなき正しさ強さへの渇望。
YouTubeで前二作を全編観れるので出来れば観賞すべき。次郎と猪八戒の冒険談を外伝的にまだまだ観たい。