燃えつきる荒野 公演情報 ピープルシアター「燃えつきる荒野」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    『人間の條件』のような大河ドラマ。
    ススキのようなものが数束ずつ舞台のあちらこちらに配置。それだけで風が何処までも吹きすさぶ満州の荒れ野を脳内にイメージ出来るのだから面白い。
    次郎役の蓉崇 (ようたかし)氏が美声。台詞が耳に残る。『柳絮(りゅうじょ)〈柳の種子が風に乗って大空を彷徨う様〉のように生きたい』が馬賊の攬把(らんぱ)〈首領〉として生きてきた次郎の人生のテーマ。皆が破滅していく中、個人的には愛犬、猪八戒〈桶谷憲司氏名演〉の死が一番哀しかった。
    DNAというカルマ〈宿業〉を背負った者達のあてどない旅路。船戸流『カムイ伝』なのだろう。抜け忍となった次郎が世界を裏側から覗き見る構成。まさにテアトルノワール。船戸物語のロマンティシズムとは、弱き者への慈しみと飽くなき正しさ強さへの渇望。
    YouTubeで前二作を全編観れるので出来れば観賞すべき。次郎と猪八戒の冒険談を外伝的にまだまだ観たい。

    ネタバレBOX

    次郎が死んでから後は、エピローグみたいになってしまった。強烈な意志を持った男の行動がないと、ただただ時代に翻弄される者を眺めるだけになってしまう。226くらいから駆け足の印象。あれよあれよと敗戦してしまって少々残念。ここまでの大河ドラマ、四兄弟の死に様生き様を堪能したかった。いつか映画化して貰いたい題材。個人的にはやっと感覚的に満州国の全貌がうっすらと掴めてきたような気持ち。
    原作者船戸与一氏は胸腺癌で闘病中に執筆。刊行の二ヶ月後に亡くなる。作者の書いておきたいエピソードや人物が無数にあったのだろう。情念のようなものが舞台上に立ち込めている。
    第一部の冒頭を考えると、二宮聡氏演ずる謎の男、間垣徳蔵こそがもう一人の主人公だったような構成。
    『ヘイヘイホー』の歌の登場人物全員による合唱で終幕。

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    2019/11/01 22:03

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