ドイツの犬 公演情報 演劇企画体ツツガムシ「ドイツの犬」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ナチスドイツ占領下のフランスを舞台にしたナチ進駐軍とレジスタンスのドラマである。
    この時期の素材は事実にもとずいた記録も、映画も、娯楽作品もシリアスなものも、かなり大量に輸入されていて、なじみがある。「ドイツの犬」というタイトルだけで内容は推し量れる。舞台は、観客にわかりやすい対立項の上にほぼ三年間のロマンを組み立てていて、脚本も演技者も演出も破綻はない。だが、同時に新しい発見はなにもない。
    7回目の公演を迎えたばかりの(といっても主催者たちは十分中年だが)劇団が十一年かけて三部作まで作るには何か深い独自の動機があったのだと思う。そこが見えてこない。
    論評はほとんどその一点に尽きる。
    最近、ナチ占領下の素材は、翻訳では加藤健一事務所でも、民芸でも取り上げられたし、日本でも三谷幸喜から、次の世代の古川健や野木萌葱も書いている。チラシによると、現在の政権下でこそ上演したいということだが、そのような現政権への批判の政治劇として受け取るには、先に挙げた作品が、それぞれ焦点を絞って素材に取り組んでいるのに比べても、ポイントがあいまいになっている.
    時代設定を明らかにする素材なら、70年も時間がたてば、立派な時代劇だ。時代劇ロマンなら、日本製西洋ロマンとして見ればいいのだが、アピール劇とするならば、もっと身近なところに素材を求めるべきだろう。日本の新劇にはそういう伝統はある。「占領トレジスタンス」で言えば、近い例では「上海バンスキング」。日本の植民地の実相をしがない流れ者のバンドマンの目で、鋭く告発していて、その批判は戦後日本にも中共軍にもおよんでいる。秋元松代の「村岡伊平次伝」。弾の打ち方も学ぶところは多い。あげていけばいくらでも先例はある。書かれていない素材となれば、それこそゴマンとある。何も作るほうも見るほうも勝手のわからぬフランスの話にしなくてもよかろうに、と思う。
    それを客に納得させる作る側の動機はせめて、劇場パンフには書いておいてほしかった。現在の政治への危機意識はいいとしても、安易にナチと現代をだぶらせたりすると、かえって敵方の術中にはまることになってしまう。


    ネタバレBOX

    正直、エピローグには仰天した。戦争は風化したな、とわずかに残った戦争を知る世代は感じた。

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    2019/11/01 21:15

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