満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/31 (木) 14:00
座席E列3番
渋谷はハロウィンで賑わっているであろう昨日、REONさんが出演しているカラスカ公演『クロスミッション~交差ミッション~』を観にアトリエファンファーレ東池袋に足を運んだ。
先週の土曜日に観た、十字架ミッションと繋がっている交差ミッションは、時間軸で言うと十字架ミッションから交差ミッションへと繋がる話。
目覚めたら知らない部屋に居た十人近くの男女。自分たちが、いつ、何故、どうやってここに連れて来られたのかも分からない状態の彼らに、二人の男女が現れ、「貴方達は、これからゴッド・オブ・ゴッドに参加して貰います」と告げる。
ワケも分からないまま2組に分かれ、優勝者には地位と名誉と多額の富が与えられるという謎のゲームに、参加する以外に選択肢の無い彼らはゴッド・オブ・ゴッドを目指して、ゲームに参加するが、そのゲームは彼らの想像以上にくだらないゲームの数々だった。
繰り広げられるのは、死なないデスゲーム。
確かに、命は落とさないけれど、ゲームの中に散りばめられているのは、参加者たちが心に抱えるトラウマであり、ゲームを進めて行く中で、それぞれが目を逸らしたいトラウマと過去に否応もなく向き合わざるを得ず、その心に抱えた傷を抉られ、膿を出し切る事でそれまでの自分たちは一度死に、そのトラウマと過去を直視し、向き合った事で再生し、生まれ変わる。
十字架ミッションの根底にも流れる愛と救済、再生を感じつつ、描き方は徹頭徹尾コメディ。
繰り広げられるゲームは、人の知性、人間性に迫るような、人生を見直すかも知れない場面を垣間見せながらも、全編笑いが散りばめられていて、観ている間はひたすら笑い続ける死なないデスゲームコメディ。
十字架ミッションもそうだが、観終わって、舞台の台詞や場面を反芻しているうちに、じわじわ考え、ああだったのではないか、こうだったのではないかと思い至るという愉しみ方が出来る舞台。
交差ミッションもネズミの国のあの映画やミュージカルのあの歌この歌がちょこちょこと顔を出すのも楽しい。
十字架ミッションも交差ミッションも全ての役者さんが皆、魅力的で、ややもするとただの悪ふざけになってしまう舞台が、徹底的に馬鹿馬鹿しいのに最高のエンターテインメントになり得ているのは、役者さんたちの力と根底にきちんと描かれているテーマがあるからだと思う。
交差ミッションを観ると、十字架ミッションの良平がなぜ桐斗の身代わりとして教祖に選ばれたのかが解る。
良平と桐斗は、物事の捉え方、人に対する接し方、問題を解決する時に根底に温かさを持っていると言う点で、同じだからなのだろうと感じた。
10月の最後の日に、お腹の底から笑って、観終わった後に、ハッピーな気持ちで劇場を出られる後味の良い、爽快な舞台だった。
3日が千穐楽、流れとしては十字架ミッションから観るのがオススメですが、交差ミッションから十字架ミッションを観ても充分に楽しめる舞台なので、1人でも多くの方に観て欲しいと心から思う。
文:麻美 雪