ノート 公演情報 ティーファクトリー「ノート」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    第三エロチカを主催した川村毅の同世代の劇団は少なくなった。劇団活動をやめた方や、他の組織に加わる方、教える側になった方もいるし、亡くなった方もいる。遅れてきた60年代、華やかな80年代を準備した世代。その中で、T.Factoryと改称した川村毅の劇団は一貫してかつての小劇場の空気をまとって、独特のカラーの作品を作り続けてきた。ロビーで還暦記念グッズを売っている。
    この世代にとって、オウム真理教事件は、たぶん他の世代よりも切実な同時代感があるのではないだろうか。この舞台は、この事件に関わった死刑囚にその経緯を問いただす、という形式で進む。事件は一応終結しているが、同時代人にとって、自らの内にもある事件の真実を探ろうという意識がこの戯曲を書かせている。裁判記録は詳細なものが公刊されているが、それでも、「ノート」(脚注)をつけたくなる。それがこの舞台だ。
    川村の舞台はスタイリシュだ。今回もたぶん川村自身のプランの端正な美術に、照明は原田保、音響は原島正治で、完成度は高い。だが、結局、この事件はなぜここまで行ったのか、多くの市民を巻き込んだのか、その深層が、今までも映画や小説、舞台でも幾度も描かれてきたが、世代の違うものには今なおよく理解できない。
    1時間45分。

    0

    2019/11/01 00:04

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大