満足度★★★
第一幕100分休憩15分第二幕80分。
第一幕、貧富の差のない平等な社会を作る為、共産主義運動に参加した作家小林多喜二。特高警察の二人にマークされる。
第二幕、地下に潜って逃走しながら執筆を続ける多喜二。警察の包囲の網が狭まっていく。
作曲とピアノ演奏の小曽根真氏が素晴らしい。名曲揃いの上、役者6人は歌える方ばかり。中盤、小林多喜二役の井上芳雄氏が「片方だけの○○じゃ何の役にも立たない」と己の無力さを嘆くBLUES、『独房からのラヴソング』が心を震わす。作品のテーマとも言える『胸の映写機』は井上ひさし氏の創作法の開陳を。『信じて走れ』の歌詞、「後に続くものを信じて走れ」は氏の遺言のようにも聴こえ。
多喜二を支援してずっと匿う伊藤ふじ子役の神野三鈴さんが良かった。(小曽根真氏の奥さんでもある)。存在が温かく空間を立ち込めていく。
ジブリ調の優しい好青年、小林多喜二がこの世を正しく変えてゆこうと願う物語。その姿をチャップリンに準えるとは流石である。その結末はタイトルに記されている通り、虐殺なのだ。
『何か綱のようなものを担いで絶望から希望へ橋渡しをする者がいないものだろうか!いや、いないことは無い。』
井上ひさし氏の哲学がぎゅうぎゅうに詰まった遺作。