満足度★★★★
何度見てもこの芝居落ち着かない感じがする。前半の牧歌的な父親に決められた箱選びの結婚の話と、後半のヴェニスの御法度による裁判の二つの話が、しっくりこない。登場人物も多く、それぞれにかき分けられていて、ストーリーも複雑なのだが、箱選びも、法廷も、それを取り巻く、ヴェニスの都市国家のイタリア人対ユダヤ人の商業のありようをはじめとして、男装の美人や、召使の転職など一つ一つの話が、面白すぎて、子供の絵本のようにページをめくるたびに気が散ってしまう。小学生のころ学校巡演で見せられた名場面が強く印象に残っているのかもしれない。
大人になってみると、いかにも17世紀のシェイクスピア劇らしいおおらかな面白さがある。だが、三組の結婚の話が軸になっているのだから、青春の若さが役からこぼれ出ないと舞台に活気が生まれない。今の若者にルネッサンス期の無鉄砲青春を楽しんでやれというのは無理かもしれないが、ポーシャをはじめ、若者がみな、おつかなびっくりで演じている。それが舞台を弾ませない。
今回の公演は、ほとんどフルバージョンだが、裸舞台に机といすが数脚置いてあるだけのセットだ。こういう舞台だと、役者の力量がものをいう。円も創立時代の俳優がほとんど世を去って、どの新劇団にも共通する[柄でも見せられる]役者らしい新人が現れない。今回は各役よく考えられている現代人の衣装での上演(衣装。西原理恵。大健闘)だが、それだけが頼りだとやはり苦しい。キャストも、セリフも、バランスも、流れももう一つで、なんだかぎくしゃく、今回も芝居に乗れなかった。