満足度★★★★★
アゴラ劇場と提携関係にある津あけぼの座(三重)プロデュースの二人芝居。出演は関西出身俳優・坂口氏と数年前三重へ拠点を移した第七劇場・小菅氏、共に三十代(確か)。劇場の企画の経緯は判らないが良い仕事になった。俳優の身体能力が実証される80分動きまくる「ロードムービー」は一人多役・多場面・映像並のカット転換によって見事に成立していた。チンピラ2人を主要登場人物としてその他様々な人生模様(二人ないし三人)が伏線的に挿入されるが、それぞれ経緯あって最後には皆、南の海へと辿りつく。冴えない二人の海を前にしてのラストが、他の様々な人生行路と(直接的な接触はないが)交差し、「世界の中・歴史の中で」たまさか生まれて終える小さな人生の悲哀と輝きを圧縮して見せる。上演中休みなく疾走する役者の身体(と汗)が必死に浮かび上がらせようとする人生を、観客は想像により補いながら掬い取る、水面下のコミュニケーションが会場の熱にもなっているが、適度な冷却としてアドリブ的場面の挿入もあり、それと意識しない内に乗せられてしまう。うまい。