病室 公演情報 劇団普通「病室」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/09/27 (金) 14:00

    「病室」カフカの原作舞台を除くと、劇団普通の上演タイトルとしては、とにかく分かり易い。何といっても、病院の大部屋にいる4人の初老の男たちの物語なのだから。

     この病室には、脳内出血や脳溢血など、脳内に病巣を抱えた人たちが入れられている。ただし症状は様々で、かなり前に発症し入退院を繰り返す者、もうすぐ退院をする者、検査の過程で癌が発見された者など。舞台は彼らの家庭状況を掘り出すようなエピソードを挟みながら進んでいく。とはいえ、その家庭状況は、ちょっと悲しく、ちょっと幸せで。しかし、敢えて個々の出来事を深く掘り下げることはしない。(長男との不仲の原因とか、娘が離婚したいと思っている理由とか)
     彼らは老いを感じ、未来に不安と焦燥を抱き、過去に悔恨と反省を覚える。しかし、それほどドラマチックなことが起きたりするわけでも、絶望を伴うような悲惨な出来事が生じるわけでもない。まさに人生に起こりえる『普通』のことなのだ。
     劇団普通が掲げる「なにかおきているのかもしれない、なにもおきていないのかもしれない」というテーマそのままに、何かは起きているのだが、果たして起きたといえるのかという、どこの家庭でもありうる情景描写が積み重ねられていく。
     
     病室では、それぞれに、おそらくは来ないであろう希望的な未来について語り合う。または、家族に悪態をつきながらも見舞いに来た家族を、病室の窓から見送る。あるいは、死期の近い自身のことを泣いてばかりいる妻のことを、ぼやいてみせる。あるいは、家族につらく当たった過去を悔やみ「仏になった」とうそぶいてみる。

     片岡の妻と娘が、父の茶碗の蓋を買いにスーパーに行く時の会話が、いかにもあるあるで話を身近にぐっと引き付ける。何ともおかしい。

     看護師の女性と理学療法士の男性の逢瀬も、彼らの未來に待ちうける平凡な苦楽を暗示させて、この舞台に厚みを持たせている。バラ色の幸せではないけれど、不幸でもないよと。

    ネタバレBOX

    ラストに示される、やはり来るべくしてきた別れのシーンが、なんとも切ない。

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    2019/09/30 15:48

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