満足度★★★★
中島淳彦作と言うと何処かでやった音楽ライブ風の公演を観たのを例外として、殆どお目にかかる機会なし。たまたまそうなのか料金やや高めだし、何となく想像される「心暖まる/ちょっと笑い」系統では費用対効果が云々と候補から外れてしまう。今回は同じ時間帯に競合他公演なく、興味津々で覗いた。
「何となく想像される」芝居の範疇では確かにあったがリアルの断片が徐々に頭をもたげて来るあたりが、この作家の真骨頂(それとも「史実」の力)?判別はつかないがこれが意外に良かった(意外は失礼)。
二村定一にスポットを当てた舞台で、以前からあった素朴な疑問・・エノケンで有名な唄の「正式な歌い手」?として逐一この人の名が上る理由・・に判りやすく答えてくれたし、音曲と人の摩擦熱とで賑わしい楽屋の光景のどこかしらから吹く隙間風は言うほど温くない。芸の世界に身を投じた人生たちを遠慮会釈なくスリコギのように混ぜっ返し、引き潰す、その酷薄さもまた良い味なり。
役者自身が生演奏で歌う舞台としては達していたいレベルにあり、舞台に華をもたらした。特にアコーディオンの弾き手は元来役者だったがある舞台で楽器と出会い、プロに師事し他の楽器もやる今や演奏家の顔が主であるという人。だが演奏は勿論、風貌・演技も貢献度大。
願望や欲求を直線的に行動に表わす者共の一途さが、愛おしく、羨ましく、懐かしい。
旅一座の役者たちや小屋主、芸人志望といった役柄をこなす役者たちに安定感あり、戦後間もない日本の「裏路地」の匂いを嗅いだ感触であった。