ツノノコ、ハネノコ、ウロコノコ 公演情報 フロアトポロジー「ツノノコ、ハネノコ、ウロコノコ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    物語を観たまま受け入れれば国家陰謀による悲劇、ディストピアの世界そのものである。しかし、ラストシーンがどうも気になるが…。物語は重厚・骨太で、その雰囲気を舞台美術、音響・音楽、照明等の効果で上手く引き出している。もちろん架空・仮想世界の出来事であるが、現実にあり得ると思わせるところが怖い。この公演でのテーマが人の生き方そのものを問うような鋭さ。観応え十分な力作だ。
    (上演時間1時間45分)2019.9.10追記

    ネタバレBOX

    舞台美術が素晴らしく、壁は煉瓦や波トタンで廃墟のような場所を演出する。中央に太い柱、その横を回り込むように階段が見える。上手側は別場所への通路、下手側に窓と通路。冒頭は 頭陀袋のようなものを被った子供たちが無邪気に遊ぶ姿。廃墟のような場所の雰囲気と子供たちの姿に違和感を覚えるほど明暗対比した光景が鮮烈だ。

    時も場所も架空の世界を描くが、何となく現実味を帯びているような。物語は正化11年、ある研究者が人間の隷属性を高める働きをする新たな細胞を発見した。細胞の培養に成功した国は軍事目的のため国民に細胞ワクチンの投与実験を始めた。その結果生まれたのが「クラフト症候群」と呼ばれる早老症の子供たち。国家は秘密裏に処理するために「特例区」と呼ばれるこの場所に隔離し虐殺を行う。物語は人体実験=軍事利用を目的とした社会性とその犠牲になった国民(子供)の思い、その深く埋まらない溝を重厚に描いており目を逸らすことが出来ない。警鐘と感動が織り込まれた内容、それは観客(自分)の心に強く響いてくる。

    1人の女性記者がその事実を取材しに訪れる。後日、その取材記録を公にしたような描き方のように思えるが…。国家への報復、その報復手段が火炎瓶という何十年も前のもの。その前時代的な方法を以って、いつの時代でも理不尽・非道な施策には立ち向かうという強い意志が込められているようだ。同時に独立記念日、独立広場などの台詞から非道な扱いを受けた国民の抗議行動、束縛(特例区)からの解放の意図が伝わる。

    演出は、牢獄を思わせるような格子イメージの照明、場面状況に応じて照明を諧調させたり強調・印象として朱色や暖色など使い分けが巧みだ。音響は「ただいま さよなら」?を歌うなど哀調を帯びた選曲が心にグッとくる。この公演を通して、知らない事、考えない事、見て見ないふりをすることなど、その批判的視点を持たないことの恐ろしさを改めて知らされた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/09/06 19:12

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