人生のおまけ~Collateral Beauty~ 公演情報 演劇企画イロトリドリノハナ「人生のおまけ~Collateral Beauty~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     初日を拝見。タイトルの「人生のおまけ」は映画「Collateral Beauty(邦題・素晴らしきかな人生)」を意訳したものだ。劇団「光希」の看板女優として活躍してきた森下 知香さんだが、イロトリドリノハナを主宰してもいることは多くの方々が既にご存じだろうが、如何にも彼女の作品らしい作品に仕上がっている。初日、若干硬い所も観られたが回を重ねる毎に良くなることを期待している。音曲の使い方もグー。(華4つ☆ 追記2019.9.7)

    ネタバレBOX


     何時までも抜け出せない世界同時不況。資本主義全体の停滞は明らかであるが、この中で広がる格差社会現象についても、元校長先生で現在は潤沢な年金で悠々自適の生活を送っている耕平と対比するように、優秀な研究者でありながら困窮を極めるチャカーナのメンバー達という形で織り込まれている点にも注意したい。既に騒がれなくなったが自殺者数が毎年3万人を超えていた時期にあってさえ、ポスドクの自殺率は異常に高かったことを思い出して頂きたい。この自殺傾向は多少下がってきてはいるものの、研究者の多くが経済的困窮の為に呻吟している事実は今も変わらない。
     この格差社会は既に1970年代から始まっていようが、殊にそれが酷くなったのはリーマンショック以降である。そしてリーマンショックの起った時、既にインターネットは世界中を結ぶ通信インフラの中核技術の地位を確立していたのではなかったか? 一般的に生産性は以下の式で表すことが出来る。即ち、
    基本的に生産性=商品÷{生産手段(様々な社会的インフラも入る)+労働}この式で自分が示したいのはインターネットが光速で世界を繋ぐ通信インフラを確立する前の状態である。即ち多くの人々が現在、現実に認識しているレベルに近い。然し、と自分は言うのである。インターネットが世界中の殆ど総ての人間(無論、ゾミアで暮らす人々及び飢餓故に他の総てを犠牲にせざるを得ない人々は含まない)をその網で絡め捕った時以降、主流派経済学論者が主張する通りであるならば、大不況の直後こそ、更に発展するハズの資本主義が一向発展しないどころか、先進諸国、ロシアを始め、既に経済成長鈍化傾向を見せている中国を含め、殊に資本主義を奉ずる先進諸国の経済が実質借金まみれになり、国家経営を金融に牛耳られた挙句、日本等は最早異次元緩和迄行って打つ手が無くなり、自動車、船舶、多くの半導体製品(太陽光パネル等)、家電で国際競争力を失い、稼ぐ力を持つハズの高次な知的レベル産品を開発する力も無いまま、最早儲けることのできるのは、コストパフォーマンスの高い戦車などの武器だけという有様である。ところで、外国はスペックの良さは認めても命の懸かる戦場での実戦経験を持たない国が作った武器等買うはずもない、その為実戦経験の場を作る為に専守防衛のみとしてきた我が国の「軍事力」をアメリカとの集団的自衛権を法制化することで海外派遣し、実戦で破壊と殺戮及び当然のこと乍ら日本人「兵士」戦死を含めて武器を売る為の道具にし、金儲けに走ろうという算段。(言っておくが企業の最優先課題は常に儲けることである。ハッキリ言うと民衆の人命や悲痛等儲けにならないから「有効活用」しようとの判断だろう。)これは産業界が待ちに待った実戦経験を積ませることによって可能になるし、同時に最先端の軍事技術をアメリカから輸入し日本であわよくばカスタマイズして周回遅れだが、スペック的には可也充実し、コストパフォーマンスも高い商品として売ろうというのが??重工を始めとする日本の長大重工産業の腹だろう。だが、こんなことを検討する前に、憲法改悪は国民の賛成が未だ少ない為産業界及び政府が現在行っていることが、労賃を抑えたまま企業収益を高めることであろう。その為の武器はインターネットだ。どういうことか? 簡単なことだ。生産性は、成果物や投入リソースから直接引き出される必要はない。企業目的は利益を得ることだから、労働生産性云々ではなく、投下資本に対する利益の多寡が重要だ。一方、人間の身体能力などこの千年の間に大した変化はない。僅か100mを走るのに最速10秒近くかかるのだから。そこへ利潤を追求する企業が世界中に網を広げたインターネットを用い、利潤拡大最適化をしてきた。これは、生産手段の延びが鈍化・停滞すれば、労賃を一定にしても生産性が上がるようなシステム構築をすれば良いとなるは必定、一例をあげれば先進国の労働者1人を雇う賃金で途上国の人間ならその数倍以上の人間を雇える。ITの進歩で熟練労働者なども最低限必要な者以外は首を切れる。少しパソコンの講習をして現地採用すれば、同じ労賃で雇った現地採用の人数倍と同等とまではいかなくとも生産性を上げることができる。結果的に労働コストは低賃金に方向づけられるから削減が進み、勤労者が貧しくなるのと反対に企業会計の生産性向上に繋がる。普通の人々が貧しくなる構造がここにある。式で表せば、
    資本の生産性=利益÷投下資本となる。  
     こういうことを書くと作品に関係ないとか政治的だとかアヤをつけてくる蛙がたくさん居るが、この程度の政治、その下部構造を為す経済分析ができずに演劇を語るのは片手落ちというものであろう。何故なら、シェイクスピアを挙げるまでも無く、演劇はその総合芸術性、発生に関わる時点で祝祭と深い関わりを持っていた点から見ても極めて政治的、社会的な芸術であり、そのような己の出自からこそ、多くの発想、着想、展開の具体性と妙を得て来た芸術様式だと言えるからである。(演じていた者達も被差別民であったり、流浪の民としての遊芸者であったことをみても意味深長である。)庶民生活を描く場合に於いてさえ、それは無論大いに作用している。例えば、下町長屋に暮らした店子たちに政治的発言権は無かった。意見が在る場合、大家、地主である役付きの人々の力を借り彼らの口を通してお上に訴えねばならなかったのである。演劇作品でも良く扱われる落語の持つ面白さの陰には政治に関与することのできないこのような庶民の悲哀があったと考えた方が正鵠を射ていよう。演劇が浄瑠璃など人形を用いる場合であっても「身体表現」であるのは、その根底に我々が生き物であり、生き物である以上、食わねばならず、食う為には食物を入手し、食べるという身体の動作を余儀なくされるということから来る。この制約無しに生き物としての悲哀も存在することの深さや意味も問う事ができないというより、真の意味を持たない。



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    2019/09/06 13:01

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  • みかんさんへ
     お疲れさまでした。知香さんが校長先生の年金は月60万位というお話もして下さったので、それに自分の周りには実際に研究者がたくさん居るのでポスドクの自殺率が異常に高かったことも気付いていたのです。何しろ年間自殺者が3万人を超え続けていた時期の全体平均の十数倍の自殺率だったのですから。学歴と年齢が高く、理屈も筋が通っているので企業は雇いたがらない。一方、大学で助教授(今でいう准教授)や教授になる為にはポストが空かなければならない。ポストの数はふえていないのに、少子化を見越して大学側は大学院進学者の数を増やすことで経営健全化を図っていました。ですから図抜けて優秀か指導教授に気に入られている人しかおいしいポジションに就けないという現実が在った訳です。文科省の官僚というか日本の官僚は無能だし腐り切っていますから国民のことなど一切考えていない。まともな人は早目に辞めて転職しちゃいますから、残ってるのは人間的には屑ばかりというのが実態で、中教審は反動のどうしようもない団体だし、イノベーターとしての才能を持つ人間を日本は寄ってたかって潰す。だから、優秀な奴の多くはアメリカ等に出てしまって戻ってきません。残念なことです。自分の周りにもそういう連中が何人もおり、偶に事情があって戻る連中も本当は日本を嫌っていて、言葉に不自由しない連中で日本を選ぶ人間は1人も居ません。それが日本の実態です。今後も日本が今のような社会である限り未来は残念乍ら無いでしょう。最近知り合った連中の中に気鋭の経済学者が居て彼と話した時の記録を纏めている所なので纏まったら今度お送りしましょう。2年程前既に亡くなった方ですが、竹内 芳郎さんというサルトルの研究者が討論塾というのをやっていてその弟子の1人が自分の友人なので、最近自分も参加していて竹内さん亡き後の第2段階で準メンバー的な位置に居ます。討論塾に発表後になりますが、何かの参考になれば。もしご興味があるようなら、現在2カ月に1回、開催していますのでいらして下さい。テーマはその時々で異なりますが大体13時半から始めて、途中10分ほど休憩を挟んで約3時間。会場費として1回500円掛かりますが、資料が在る場合、基本的には資料代もこの中に含まれます。出席なさった方には、まとめのリーフレットが後程郵送されます。基本どなたでも参加できますのでご興味あればどうぞ。会場は決まっていませんが、自分が参加するようになってからは、本郷3丁目の近くにある湯島地域活動センターを良く使っています。URLも載せておきますね。http://www.asahi-net.or.jp/~yh8t-fkc/to/ また。ハンダラ 拝

    2019/09/13 01:33

    ハンダラ様、ご観劇ありがとうございます。
    また、詳細かつ的確なご批評を頂き、誠にありがとうございます。
    おっしゃる通り、演劇は社会的な側面を持つ芸術であると思います。
    そうなのです!ご指摘の通り、裕福なシニアと疲弊する若者=研究者の対比は、今作のテーマの一つです。
    この作品はお父さんの第二の人生を考えるという家族劇の形をとりながら、その裏にある格差社会などの社会問題を、さりげなく織り込んでみました。
    それを感じてくださって、とっても嬉しいです!!
    コミカルで現代的な作品ですが、私にとっては、前作の「明日」と同じように深い意味を持っています。
    お客様に物語を楽しんでいただきながら、「人が生きること」、そして社会の在り方にささやかな一石を投じていきたいと思っています。
    これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます!

    2019/09/12 23:32

    知香さん、皆さま
    追記しておきました。主に格差や日本の現状分析です。
                       ハンダラ

    2019/09/07 12:29

    知香さん、皆さん
     アップしておきました。これから芸祭へ行ってきます。
    なるべく早いうちに追記しますね。
                     ハンダラ 拝

    2019/09/06 13:04

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