満足度★★★★
元宝塚トップスター大空ゆうひさん主演の傑作。個人的には三越劇場版『壁蝨』以来の衝撃があった。中二の娘役の池田朱那さんに見覚えがあったが、矢張『壁蝨』にて主人公の娘に苛められる役として出演していた。た組の申し子のような台詞回し。天才なのでは?池田朱那さんの全く違う役での演技を観てみたい。
物語は旦那と奥さんと娘のごく普通の一家の風景から始まり、奥さんが記憶障害を突然発症。少しずついろんなことを忘れていく。優しい旦那の介護とそれを知らされていないが故の娘の怒り。
ほぼすっぴんの大空ゆうひさん(篠田麻里子さんに似ているような)が素晴らしい。ただそこに佇むだけで観客の『母なるもの』への記憶を呼び起こし、時には舞台をぐるぐるぐるぐる駆け回る。旦那役鈴木弘介氏の台詞は絶品。『早く行かないと、なので』など細かいニュアンスのセンスに唸る。演者以外舞台に上げない為、セットや小道具を動かしていくのも役者自身。集中力が途切れない。
クライマックス、夜の公園での母娘の会話。至極の名シーンであった。この遣り取りを観れただけで満足。場内も至る所で啜り泣き。