満足度★★★★
アトリエ閉鎖後初の貸し小屋公演。まずはやはり劇場とアンサンブルの芝居とのマッチングが気になっていた。というのも、シアターグリーン(box in box)で観た芝居(過去10本程度だろうか)全てでは勿論ないが「頑張って作ってるのになぜかイマイチ」と感じる事しばしば。原因を手繰って行くと私の見立てではどうやら舞台上に架空空間を作り込めない(チープに見せてしまう)劇場の造りにある、と思っていたからで。ステージの奥行は狭く、客席の勾配に比してステージの天井が低く照明機材も見てしまう。この特徴はブレヒトの芝居小屋(旧アトリエ)とは真逆である。
舞台は健闘していた。可動式の装置、唄、かいぶつのキャラクターや、背景映像など。しかし、劇場の特徴に関連するが、客席から見下ろす条件で見るステージは箱のようで、三つの装置は動くので感覚としては一面の床であるが、これが「黒いパンチ(カーペット)が敷いてある場所」、という具合に見えてしまう。役者が「役」としてでなく本人に見えてしまうのと同様、劇場が架空の空間でなく劇場として見えてしまう。この「素」へ戻される引力にどうにか抗って役者は役を生き、スタッフワークに工夫を凝らし、そして観客は想像力を逞しくして物語世界を泳ぐ事はできた。