光の祭典 公演情報 少女都市「光の祭典」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    兵庫出身の葭(よし)本未織が主宰、作演出のユニット少女都市は、この公演で一旦休止という。聞けば活動は僅か2年と何ヶ月。今回久々の公演。で、兵庫と東京で活動と紹介にあるが、東京での公演は初めて。未だ二十代半ばである彼女の中に流れる時間は長く(時間の速度が遅く)、たかだか2年でもある事を成すに十分な年月という事なのだろう。今後は「兵庫に帰って」、文筆の方に力を入れるのだとか。
    これからウォッチして行こうと思った矢先で残念である。
    舞台は中々うまい作りで若い役者誰もが目を引く立ち姿。乗峯雅寛の美術は中央に回転する円形の台(同心円の小さいのが上に乗っかる)を置き、効果的であった。

    ネタバレBOX

    学生映画サークルのメンバーの、その後と学生当時の回想を行き来し、「実態」「真相」に迫るミステリー型の構成。映像業界だけにそうなるだろうホットな男女関係(その道で地歩を築く男に憧れる女、その熱い眼差しに揺れ悩む男)あっての別離、喪失の切なさを滲ませる演技が皆うまい(絶妙な泣きの表情が)。切なげの表情は見る者に感染し、心揺さぶるので気持ちが良い。(この表情見せられちゃったら感染しちゃうよね、というやつ。)
    ただしストーリーは終盤になるにつれ、情報の空欄(謎)を残してじらし、散々盛り上げただけに、その答えを何にするかが問題になるが、う~むそこ止まりか、という種明かし。(だが観客はそこまでに盛り上ってるし役者も好印象でイメージ壊したくない心理が働き、まあ許容することだろう。)書いた順序が気になるが、この最後に謎解きされる「事実」は、当事者たる男と女いずれにとっても、それまでの行動の裏づけとするには弱く、そこは残念さがよぎる。
    残念と言えば、これも。・・地味だが堅実さを発揮する男が、主人公の女性に「手伝って欲しい(カメラを回してほしい)」と頭を下げるその仕事が、始めは自分の地元の「おじいさん」のために、お祭で流す映像だと言っていた。カメラを握れない程のトラウマを抱える彼女に男は、この地味げな仕事のことを静かに情熱的に語るのだが、業界特有の「人気」「成功」「受賞歴」といった競い合いの喧騒に振り回されるのでなく、本心から意義を感じる仕事に能力をささげるべきではないか、というメッセージの仄めかしがあった。その通りならかなり感動モノなのだが、ところが彼の言う「おまつり」とは4年に一度のスポーツの祭典の事であり、デカイ仕事なのであった。そうなると、男は自分が大きな仕事に携わっている事を誇示し、女心にアピールした事により、女がなびくと思いきや、またぞろ女はトラウマに悩む事に・・そして女はその男のもとを去り、新たな道へと踏み出していく・・と来るのが常套だろうに、「大きな仕事」はこの芝居ではドラマ的に盛り上る要素と位置づけられているのだ。これは一瞬大きな感動の波が寄せただけにガッカリであったが、二十代半ばの上を夢見る作家に相応な展開かも知れない。

    ストーリー的には他にもすっきりしない部分があったが、しかし芝居は全くストーリー頼みであったかと言えばそうではなく(先日同趣旨を書いた気がするが失念)舞台に漂う一貫した気分があり、総体として何かを伝えてくる感触はあった。

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    2019/08/25 01:53

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