満足度★★★★
女性のみに許された子供を生む、と言う事について現代女性の生き方の社会劇。現代の家庭と職場の問題でもある。脚本はさらに欲張って、従業員の職業倫理にまで踏み込んでいるがこれは欲張り過ぎた。
ここの所、新進の小劇場作家を次々と起用する青年座の公演。今回は主宰する劇団JACROWで、現代社会模様を描いてきた中村暢明の起用である。現代社会の女性の生き方については、一昔前のようなパターン化は不可能で、人の数ほど生き方はあり、そこにひとりひとりのドラマは生まれる。しかし、芝居としては、どこかで圧倒的な観客の共感を呼ぶようなシーンがなければ成功しないわけで、この本はまんべんなく【とは言えないが、かなり広範に】女性の社会生活と出産の問題を扱っているが、問題点の羅列に終わっている。それは主人公の安藤瞳が熱演すればするほど、観客の感情が少しづつ役から離れて行くことにも表れていると思う。
脚本は小劇団でかつて見たものに比べれば、細かく出来ているが、それでも現実の大企業の内情や、小企業のあり方についてはご都合主義で現実性に乏しい。もっと、テーマを絞ってリアルな状況設定をしなければ、問題の核心に迫ってはいけない。せっかくの青年座の俳優たちも厚みを出すことができない。
演出は久しぶりに本家に戻った宮田慶子。散々な目にあった(であろう)新国立劇場の芸術監督を離れて、ご本家での登場だが、まだ肩に凝りが残っている。硬軟共に行き届いている宮田演出を又見せてほしいものだ。