夢ぞろぞろ 公演情報 EPOCH MAN〈エポックマン〉「夢ぞろぞろ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2019/08/08 (木) 19:30

    なんという二人芝居!この舞台美術、繊細さと大胆さ、沈黙と歌、緩急のタイミング、
    全てが素晴らしく、熱くて温かい。
    田中穂先さんとの掛け合いも見事の一言に尽きる。
    アイデアてんこ盛りの舞台に、才能とチャレンジ精神が詰まっている。
    ひとり芝居の時よりも“受けの芝居”が出来る分、世界観の広がりを感じる。
    秀逸な舞台装置に一瞬ドリフの舞台を思い出したが、大いに笑ってしんみりして
    ラスト、この泣かせ方はずるい!
    それと小沢さん、足きれいすぎです。

    ネタバレBOX

    会場に入ると舞台上手寄りに四角いキューブ状のセット。
    駅の売店の面がこちらを向いていて、たくさんの商品が並んでいる。
    上の方に書かれた「KIOKS」のつづりが笑わせる。
    90度回ると隣の面は駅のベンチ。
    その隣は中学校の校舎で、窓が空いている。
    そしてもうひとつの面は、売店のおばちゃんが出入りするドアだ。
    この四角いキューブがぐるぐる回って場転するのが秀逸。
    人力で回るのを観ると、何だか昔のドリフの舞台を思い出して楽しくなる。

    会社に行こうとは思うのだけれど電車に乗れなくて
    いつまでもホームにいる男(田中穂先)と
    売店で働くおばちゃん(小沢道成)の二人芝居。

    何を聞かれても答えるおばちゃんと、聞かれたくないことだらけの男。
    中学の時の初恋の思い出に男を巻き込んで盛り上がるおばちゃん。
    ふらふらと電車に近づく男の手をしっかり握って我に返らせるおばちゃん。

    会社の期待に応えられないのではないか、と不安になったら
    応えられない自分の未来に絶望して、自分の存在すら危うくなっている男に
    「私には私のことしかわからないから、私のことを話すわね」と言って
    初恋の彼は目の前で電車の事故により死んでしまった、それがこの駅・・・
    と語るおばちゃん。
    その時の自分の行動から「人は自分のことしか考えないもの」と言うおばちゃん。
    笑い満載の物語の中で、衝撃的で痛くて切なくて一番哀しい場面だ。
    周囲の評価の中で生きて来た男は
    「明日も乗れないと思うけれど、ここまでは来られる」と言って帰る。

    痛みを知る人による“人生の応援歌”というドストレートなメッセージが
    潔いほど真ん中に来る。
    客入れの時点から昭和のアイドル歌謡曲が次々と流れてレトロな雰囲気だったが
    (また私全部歌えるんだな、これが・・・)
    おばちゃんの育った時代、今よりずっと人間関係が濃密だった時代を良く表している。

    田中穂先さん、初恋の相手を演じる時のパワー全開な熱演と
    電池切れのようなサラリーマンとの落差が、振れ幅大きくて素晴らしい。
    ふたりのデュエット、最高!

    小澤さん、いつもびっくりさせてくれる舞台に期待大だったが
    設定からしてやられた感じ、面白すぎだわ。
    それなのにこの涙は何だ?!
    このラスト一瞬の劇的効果の大きさはどうだ?!

    おばちゃんのキャラ、その過去、売店のトイレットペーパー、
    テンポよく展開するストーリー、それら全てに飲み込まれる幸福。
    夢って日常の中にこんなにたくさんあるんだ、見えていないだけなんだ。
    そう気づかせて元気づけてくれる、アリナミンAみたいな舞台。

    田中夢子、最強のKIOKSの女・・・。


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    2019/08/09 00:18

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