天守物語 公演情報 少年社中「天守物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    圧倒的なジャパニーズ・ダークファンタジーの面白さ!
    力のある役者陣が、ファンタジー度を上げた脚色で
    緊張感溢れるストーリーを繰り広げ、息つく暇もない。
    衣装の美しさ、シャープな立ち回り、良く通る美声と
    目にも耳にも麗しい舞台だった。
    人も妖(あやかし)も何と弱く哀しいのだろう。


    ネタバレBOX

    舞台は白鷺城の天守閣、ここには巨大な獅子頭を祀る妖(あやかし)が棲んでいる。
    殿さまの言いつけで鷹を追って来たひとりの若武者がここへたどり着き
    美しい妖の富姫と出会い、恋に落ちる。
    人間と妖の交わりは許されず、二人の種を超えた思いは絶望の色濃く・・・。

    若武者図書之助の父もまた、かつて富姫に心を奪われ家族を捨てた過去がある。
    妖は人間を殺すと鳥になる、鷹もまたかつて憎い人間を殺めて鳥になった。
    もがきながらも心のままに生きたいと願う図書之助の弟の存在。
    といったエピソードが自然な流れで組み込まれており
    ストーリーに膨らみを持たせている。

    しがらみに捉われてもがく人間と、心のままに生きる妖。
    天変地異を妖のせいと思い込んで、妖を目の敵にする人間の愚かしさ。
    それらがくっきりと浮かび上がってとても解りやすく感情移入させる。
    登場人物のキャラに奥行きがあるのは役者陣の力だろう。
    群舞の力強さ、衣装の美しさも楽しませてくれる。

    富姫役の貴城けいさん、きりっと伝法な一面と恋する女の艶、
    両面を鮮やかに演じ分けて大変素晴らしい。
    図書之助を演じた廿裏裕介さん、久しぶりに涼やかな若侍を観た感じ。
    誠実な、それゆえに禁断の恋に突き進む姿が清々しい。
    薄役の堀池直毅さん、美しい姿勢で硬軟併せ持つ魅力的なキャラを表現。
    鷹役の納谷健さん、素晴らしい動きで強靭な意思を持つ鷹を演じた。
    舞台上にいる間は、常にこの鷹の動きに目を奪われた。

    ラスト、「視力を失って生きていても苦しいだけ」と嘆くふたりに
    獅子頭の化身のような、飲んだくれの近江之丞桃六(北村諒)は
    「生きることは苦しむことだ」と目を治して背中を押す。
    なぜ生きるのか、なぜ苦しいのに生きるのか、それに対する明確な答えを
    2人に告げ、その結果二人は苦難の道を共に歩む覚悟を決める。
    この舞台の強いメッセージとなって心に残る。




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    2019/08/07 01:09

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