ひのくすり 公演情報 ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン「ひのくすり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    2本立てであるが、舞台は同じ東南アジアにある小さな島。視覚による直接的な繋がりはないが、状(情)況や台詞によって連想させる。2つの話は、男優グループと女優グループの競演といった感じであるが、物語の底流にあるのは男女というよりは人間としての寂しさや悲しみ、見栄や欲望といった感情を描く。場面はほとんど動かないが、逆に人の感情の高ぶり揺さぶりが素晴らしい。2本に共通した観せ方であるが、冒頭のモノローグに観客の集中力を高めさせるあたりは巧み。
    (上演時間1時間35分) 【❤チーム】 2019.8.10追記

    ネタバレBOX

    舞台セットは、左右のベットを段々に3段組んだ6人部屋。冒頭は、このタコ部屋風の自分のベットで独白する場面から始まる。ここは日本から遠く離れた島にある炭鉱。モグラのような生活をし、日銭を稼ぐような暮らしをしている。自分さえよければ他人は関係ない、この仕事現場から逃避することも出来ず、唯々諾々と無為な日々を送る男たち。
    一方、女たちはマッサージと称して裏で風俗を営んでいる店で働いている。舞台セットは男たちと同様6人部屋。冒頭も同じように1人1人の独白から始まる。そして日々、誰が売り上げを伸ばしているか、そして客サービスまたは客あしらいを自慢している。こちらも訳アリの女たちが仲間同士の諍いが絶えない。

    この男・女の物語は別々に上演されるが、所々に伏線を張り繋がっていくことを連想させる。例えば、炭鉱の男たちが息抜きで通うマッサージ店、その台詞が暗黙のうちに観客の意識下に刷り込まれる。また男の1人は離婚によって別れた娘がおり、マッサージ店にはそれらしき娘がいる。
    男・女とも日陰者扱い、その環境下で荒んだ生活をしているが、何故か生き活きとしている。場面はタコ部屋だけだが、徹底的に台詞、会話にこだわっている。そこにストレートプレイの中に議論・口論・口喧嘩をのぞき観るような面白さがある。だから底辺でも生きている労働(生活)者の姿を観ることが出来る。無駄と思われるようなシーンを省き観(魅)せる演劇に拘った公演は自分の好み。

    男・女の物語に演出上の違いがあるとすれば、臭い・匂いであろうか。もちろん実際に嗅覚として感じる訳ではなく、そう思わせ感じさせるところ。男の外見は炭鉱夫らしく薄汚れた格好、煤けた顔。一方、女は裏風俗という設定から小綺麗にし香水も付けているかもしれない。その感覚を漂わせるあたりが上手い。
    舞台セット、プロットはほぼ同じ、にも関わらず上手く話を繋ぎそれぞれの人間臭さを描き出すところは巧み。ラストはそれぞれの環境下から逃げ出し、途中で同じ花火を観ているだろう余韻付けが見事だ。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/08/04 10:04

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