真・恋愛漫画 公演情報 ライオン・パーマ「真・恋愛漫画」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     通常、演劇を書く際に絶対必要な条件として、事件、対立・葛藤、笑い、危機一髪、意外な結末等を挙げられよう。だが今作で作家は、先ずこれらの要素を否定することから入ったのではないか?(華5つ☆、必見!)若干の追記あり2019.8.13

    ネタバレBOX

     そう思わせる説明文である。先ず、この辺りから検討しなければならない所で既に観客は作品世界に足を突っ込んでいる。即ち実際に作品を観る前から劇的世界に入り込んでいるという訳である。この辺りの仕掛けが実に巧みで興味深い。
     作品内容の細部については公演終了後に若干追記するが、内容的な深さには感心させられた。最近、自分は表現する者として自らを積極的にアイデンティファイすることに、聊か恥ずかしさを感じているのではあるが、当然のこと乍ら、自らの生きる根底にそれを置いているし、自分が生きてあることの意味もそこに置いている。そのような人間として今作が提起する諸問題は何れも極めて本質的で仮借ないものであり、其処を避けて通ればそれだけで表現者失格と言う問題ばかりである。例えば我々は何処から来て、何処へ行くのか? 我らが生きる意味は何か? そもそも、我らに意味はあるのか? 
     表現技法については、上に挙げたような総ての技法を取り去った時に如何に書くことが可能か? といったことや、もう一つの哲学的大問題。即ち死。死とは何か? から始まって死の意味する所とは何か? 死と生を対比させることで我らは何をどのように観、考え、生き、そして避けようの無い最期を迎えるのか? その時の己の心と魂、人間関係や総て関わりの在ったもの・ことと一体どのように対峙すれば納得のゆく最後が迎えられるのか? といった切実で誰一人逃れることのできない心と魂の裸形の葛藤を浮かび上がらせるのだ。そして、実際の生活である日常の、事件も起こらず、笑いも取り立てて必要とは言えず、危機一髪のアクションなんて余計で、意外な結末などもってのホカで、落語でもないのに下げも要らないという世界の限りない愛おしさをこそ描いてみせたのだ。傑作である。無論、演技の質も高く、笑わせてくれるシーンも、本当に落涙させたり、ハラハラさせたり、憐みを感じさせるシーンも鏤められている。総ての要素のバランス感覚も素晴らしい。追記は以下
     火山火山が編集者となって後任を託した天才漫画家・天童 幸一郎の担当編集者となって己を超えるべく矢継早に無理な注文を出す不自然な様や、それとなく臭わせる演技から勘のいい観客は早くから気付いたであろうが、決定的だったのが、部下に水を持って来させ薬を飲むシーンで死病であることが決定的になるシーンなど、実に上手い。

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    2019/08/02 23:36

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  •  皆さま
    ハンダラです。少しだけ追記しました。

    2019/08/13 12:17

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