実演鑑賞
満足度★★★★★
シェークスピアやチェーホフが古典として存在し続けると同時に、原案原作として、さまざまな舞台や映像媒体に拡大解釈され形を変えていくように、熱海殺人事件ももはや古典の枠を越えて存在し続けていく作品なんだろう。
力強く、つかこうへ台詞の掛け合いするが、唯一満点評価を得る演目に、冒険した作品だった。
タキシード姿を逆否定するいでたちの、
ちゃぶ台に座る、作務衣の咥えタバコの木村伝兵衛。新任してくる作業着の熊田。
そこに売春捜査官の木村伝兵衛が出てきて、
お互いがそこに存在してないかのように、交互に大山金太郎を責めたてる。
ちょっと無理矢理な熱海殺人事件じゃないかと観ていると、
更にまさかの、第三の木村伝兵衛が現れて・・
誰が敵か味方か分からない沖縄基地問題、昔存在してた公認の売春赤線地帯、
本来の熱海殺人事件には存在しないエピソードで、デビットリンチ映画ばりの
迷宮世界へと展開されていく。
熱海殺人事件の本質、怒りをしっかり捉えてるからこそ差し回せた脚本だと思いました。
ただ観客の大半が、つかこうへい世代の老人たち。
昔を懐かしむつもりで観に来たのに、開演前から流れる熱海~熱海~♪や、
なんとかワールド的なビックリストーリーには戸惑ったんじゃないんだろうか。
北区つかこうへい劇団だった、木下智恵さんだからの木村伝兵衛。
昔じゃ考えられない、夢の遊眠社だった円城寺あやさんの大山金太郎。
三浦洋一や風間杜夫の熱海殺人事件を体験してる坂手洋二さんが作ったことに
意味があった、新たな一歩の熱海殺人事件でした。
爆発するときは最後みたいな、
怒りを内に閉じ込めるのに慣れ切ってる若い人たちに、こうゆう本質から外れない、
楽に流されることにあがらおうとする熱海殺人事件は作れるんだろうか。
ps
決めセリフのラストの後に、更なる決めセリフのラストと、延々続くエンドレス。
役者さんずーと観れるにはいいんだけど、あれは継承しなくていいんじゃないかな。
金太郎が海辺のシーン言い出した時は、さすがにビビりましたよ。