明日ー1945年8月8日・長崎 公演情報 劇団青年座「明日ー1945年8月8日・長崎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    映画にもなった井上光晴原作の有名な作品の舞台化で、すでに何度も上演されているが、初めて見に行った。ラストの出産シーンではころころとした妊婦役の田邉雅菜の若々しい必死さが光った。その前の、市電の運転手(高松潤)と新妻(田上唯)の、明日の弁当についてのほのぼのしたシーンも、短いが、印象に残る。精神薄弱児の子を明日引き取りに来いと病院からいわれて、当惑する夫婦(五十嵐明、山口キヨ)も、子を思う気持ちと苦しい生活の板挟みをよく演じていた。(最後の方からで申し訳ありません)

    観劇後にパンフで知ったが、出産も、市電運転手の家庭も実際にあったことだという。そこまで、事実に基づいていたとは知らなかった。丹念に事実を調べて吟味し、作品として昇華させていることは原作者、脚色家、劇団の大きな手柄だと思う。
    休憩なしの2時間弱

    ネタバレBOX

    登場人物も異なるエピソードをいくつも並べた形で、ドラマとして葛藤が次第に高まり、解決するという一貫した筋はない。それは作品の性格上、仕方がないし、見る前からわかっていること。すべては明日、長崎に原爆が落ちるからこの人たちの姿が、愛しく、切なくなる。それも実は見る前からわかっていること。そういう、事前の作品知識を超えるものというと、私には物足りなかった。

    1989年の初演から30年たった。年年歳歳、被爆体験(国民的体験)は薄らいでいく。その風化に抗して記憶と感情を更新するには、もう少し強いものが必要だろう。ただ一つ、他の方も書いているが、バイオリンとチェロとピアノの生演奏は非常によかった。地味な芝居をしっとりと彩っていた。

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    2019/07/28 10:52

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