グッドピープル 公演情報 株式会社NLT「グッドピープル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    たのしい芝居見物だった。場所は銀座。三百人ほどのほぼ満席の客席は下北沢とはがらりと変わって、家族連れもいる老若男女、下町の町内会の観劇会の雰囲気である。
    芝居は2011年のブロードウエイのアメリカ現代演劇。大衆劇的とはいっても、中身は現代アメリカ・ボストンの下層労働者階級の性差、上昇志向、人種差別、職業差別、地域差別、などを織り込んだかなり辛い内容なのだが、万国共通の彼らの、都合のいい話には乗りやすく、酒や賭博(ビンゴ)におぼれ、常に失業不安のある労働者たちの生活を喜劇的に描いて普遍性がある。(落語の庶民の世界である)
    劇団のカラーにも合っていて、主演の戸田恵子、村上弘明、サヘル・ローズは客演ながら、脇を劇団の木村有里、阿知波悟美が支え、鵜山仁の演出も心得た出来で、幕間15分を挟んで2時間半、楽しんで見られる。中でも、戸田恵子は、こういう環境に育った女性の切なさ、可笑しさ、純な心情をテンポよく演じきっていて、この女優ならいつもの出来とは言うものの、得難い名演である。べとつかず、切れ味がよく、さっと変わるところがうまい。
    対する、村上弘明。大劇場の商業演劇は経験があるだろうが、こういう中劇場でも、なかなかいい。成り上がった医者の役を、余り芝居で見せようとしないで、ガラで押さえているところも成功した。サヘル・ローズと高田翔の台詞が聞き取りにくいのはキャリアの差が出た。
    しかし、こういう舞台で、客席が、素直に芝居を楽しんで、劇場全体が芝居の華で包まれ一つになって盛り上がる(幕内で芝居の神様が下りてきたと言うそうだが)のは、は非常に珍しい。商業演劇だけでなく、今の小劇場にも、公立劇場にもない、現代の芝居小屋のあり方を開いた老舗NLTの久々の大ヒットだろう。

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    2019/07/23 00:21

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