幕末純情伝 公演情報 ★☆北区AKT STAGE「幕末純情伝」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    未見だった つかこうへい作品。
    「やってらんねえよ!」…憤慨しつつ、それでも明日を信じて奮起する、そんな力強い台詞が随所で聞かれ心に響く。そして、つか作品らしく弱く虐げられた人々への温かい応援歌のような物語は楽しめた。
    (上演時間2時間10分)【浅野鼓由希★チーム】 

    ネタバレBOX

    セットはなく、段差だけの素舞台。大きな空間を確保しているのは殺陣シーンのため。
    梗概…冒頭、沖田総司は女で勝海舟の妹という設定。ある事情で勝家を出奔し新撰組に入隊した。ここで沖田総司は土方歳三、坂本龍馬と男女の三角関係になるという奇抜な展開へ。そして彼女の実の正体とは...。

    公演の魅力は、沖田総司が女であることから、幕末志士(土方・坂本・高杉晋作等)たちとの情交を通じて日本の行く末を語る展開。多くの幕末の物語は男中心に描かれることが多いが、ここでは新選組一番隊長で人気抜群の人物を女という奇抜な設定にし、その視点で幕末という激動期を描いている。大義名分という大上段ではなく、男・女...人間としての生き様、その身近なところを生き活きと描いているところに つか作品への共感と魅力を感じる。
    また沖田が女であるがゆえ他隊員に恋愛感情が芽生え、病が伝染すると疎まれるなど、人間臭い面も描き新選組が内部から崩壊していく過程を浮き彫りにする。人間讃歌を謳いながらも、他方では人間の弱さ切なさなどを描く。場面によっては下ネタを挿し入れながら、それが人間の愛すべきところと言わんばかりの迫力だ。もちろん つか作品に観られる啖呵を切るような威勢の良い台詞と相俟って自分の気持を清々しいものにしてくれる。

    演技は前半、特に序盤の殺陣シーンは迫力があったが、徐々に殺陣というよりは演武的な観せ方になり、ある種のパフォーマンスといった印象を受ける。出来れば要所要所は序盤で観(魅)せた迫力ある殺陣シーンを見たいところ。それでも浅野鼓由希サンの股割のような姿は力強く、斬っているという感じがよく表されている。衣装が現代風なのは開脚など和装では不都合なシーンがあるためであろうか?見始めは違和感があったが、そのうち物語に引き込まれ気にならなくなった。観終わってみれば、むしろ視覚的に時代を特定せず、その時代に生きた”人”を描くことを強調した演出ということが解る。

    閉塞した時代状況を自由な時代へ変える、その新時代の幕開けに相応しい元号「自由」へは叶わなかったが、「天下は明るい方向に向かって治まる」の「明治」時代へ。
    そして「明治」からいくつかの元号を経て「令和」へ、「幕末純情伝」は つか作品では未見であったことから新鮮であったが、根底には時代は移れども「人」と「時代」への鋭い洞察があり、彼らしい切り口で観応えある内容であった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/07/15 22:36

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