満足度★★★★★
初日観劇。
「楽屋」は数多く上演され、自分も何度となく観ているが、本公演は丁寧で分かり易いという印象だ。女優という業に魅入られ身も心も苛まれるが、それでも女優であり続けたい執念、そんな世界観がしっかり描かれている。この有名な戯曲「楽屋」をどう観(魅)せるか、演出力が問われるが…。
その演出であるが、まず「楽屋」は、いくつもの2項対比をしていることから、それを意識した舞台セットの作りは見事。上手・下手側は死者と生者、鏡台の内側と外側(客席寄り)はまさしく楽屋と表舞台を表している。また女優の懊悩・心情を表すため、照明はモノクロ諧調による陰影付けという巧みさ。そして何といっても役者の動線を意識した演出は素晴らしい。
演技は、力のあるモノローグ、その意味で女優が”女優”になりきっており「楽屋」の世界観を堪能させてくれる。そして舞台と客席の間には楽屋の鏡があることをイメージさせ、鏡の中の自分に語りかける、同時に楽屋での回想・稽古風景を挿入する。もちろん鏡に向かうことは、常に客席側を向き演技し続けることになり、鏡という媒介を通して自分と観客という内外を意識すること。まさしく女優の存在そのものを表現している。初日のためであろうか演技が少し硬いように思えたが卑小なこと。
(上演時間1時間25分)【Aチ-ム】 後日追記