ノーカントリーフォーヤングメン 公演情報 コンプソンズ「ノーカントリーフォーヤングメン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初の劇団。チラシが中々の好みである。タイトルにも何かくすぐるものがあった、と後で思い当たるが気付くのは芝居の途中。既視感を覚えてある映画を思い出す。と、芝居のタイトルの中に映画のタイトルが...。
    その映画と符合する所から書けば、ある得体の知れない男がある地方(田舎)を訪れている。連れの女がこの地に住む人を訪ねたがったのに付き合った格好だが、まず交番での会話で人物の異様さが明らかとなる。この種の人格を造形し得た事が私としては大きい評価対象だ。男は常人に受容されがたい理屈を、真顔で威圧感と説得力を持って語るのみならず、他者の人格の隙き間(非整合性)に冷酷な楔を平然と撃ち込み、獲物を狩るようにしとめる。しかもそれが当然の事として行なわれ感情を高ぶらせることもない。
    映画館でその映画を視た時は衝撃で動けなかった。確かパルムドールも取って広く知られた作品だが、善悪の彼岸にある風景、言うなら前世紀末からの不穏な思潮を煮詰めて人格化したかのような怪物におののくと同時に、深く納得する所があったものである。映画の中にある娯楽要素とは、勝敗が(一方の「死」によって)容赦なく決まる所であったが、この殺戮者の中に何らかの一貫した哲学を感じさせる要素は映画の中に仕込まれている。結局それが何かは「判らない」のだが。
    芝居のほうではこのサイコパスは話を進める一要素に過ぎないが、芝居が取り上げているテーマ(超越的・超自然的存在と人間の関係?)にうまく絡み、深みを与えている。
    話の本筋は、彼の来訪を受ける「地方=田舎」のスピリチュアル世界に毒された?若者たちによって展開される。神社の神主(巫女カフェを作って金儲けし、人格的成長を一切拒否して人格者的著名人になりたい超低劣な俗物)、マタギであった父との幼少時代に何らかの傷を負っている元野球少年(父と居た山の中で父が撃たれ自分が生き残った。野球人生に挫折した)、警察官であるその兄、その彼に自殺を止められ一緒になった妻(常に夫を罵倒している)、その親友でやりマンの女、その夫(地元愛が強く先祖からの墓を大事にしており、神社と接する墓を壊すぞと神主から脅されている)、元野球少年は十代から女子にはモテ、大人や子供からは期待されるタイプだが今は超自然のパワーで世界を(村を)守ろうとするサークルのリーダーをしている。そのメンバーであるどこか抜けている3人の男女、そして彼に影響を与えている「たんぽぽ」なる女性、この人物も幼少時に不思議な逸話を持ち、ある霊的な力を持っている。この話は、その力を関係者(神主然り)がほぼ皆信じている前提で進む。
    エピソードは点描式に転換でテンポ良く進み、印象としては超自然要素に加え意表をつく着ぐるみや歌と踊りなどが挿入され、タッチは殴り書きに近い。だが喧騒に支配されない静謐の時間が確保され、聞こえるか聞こえないかの協奏曲は美しくはないが心地よい。正論を勝たせる事なく混沌を良しとし、露悪に陥らずエネルギッシュで悲哀も滲むが冷徹、という線をうまく位置取り、結論を持たない劇であったが中身は好物であった。

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    2019/07/07 09:47

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