ブアメード 公演情報 Pave the Way「ブアメード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    公演の魅力はミステリーサスペンス風として物語を牽引するところ。本筋は観応えがあると思うが、展開がやや散漫で冗長に感じる。少し枝葉と思われるような脇筋・場面をカットし、物語をシャープにすることでテンポも良くなり印象付けも出来るのではないか。
    また、前作「あの鐘を鳴らすのはあなた」ほどではないが、やはり怒鳴り声というか大声が多く、本当に大声で激白するシーンとの区別、そのメリハリが効かないところが残念だ。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    大学のサークル部室内。張りぼてに白黒ペイントで絵柄を施したセット。中央にテーブルと椅子、上手側に別場所をイメージさせるスペース。全体的に白っぽい感じであるが、照明(真偽判定の際の照射)効果を意識した配色であろうか。

    物語は、大学サークル内の人間関係を中心に自分と他人との関わり合いなど、表現し難い内容を浮き彫りにする。自分は友人から疎まれている、その被害妄想男・古幡翔(布施勇弥サン)と孤児院育ちで不思議な能力を持つ女子大生・伊地知月美(藤本かえでサン)を中心に織り成す青春群像劇。まず月美は人が嘘をついたかどうか分かるという能力を持つ。何となく妖怪覚(さとり)を思い浮かべる。人の心の内が分かるという点で共通していると思うが…。古幡は伊地知に好意を寄せていたが、その彼女は同じサークルメンバーと付合い始めた。2人の交際に古幡は疑問を浮かべ、悶々とした日々を過ごす。ある日、部室のテーブルに「お前たちの、秘密を暴く」と書かれた手紙が置かれていた。その夜、伊地知が姿を消し、彼女の行方を探すサークルメンバーが観た真実とは...。

    伝えたいテーマは分かるし、楽しんで観てもらうようミステリーサスペンス仕立てにするなど工夫していることも解る。しかし描き方が粗く丁寧ではない。例えば、なぜ古幡翔が人間不信になったのか、原因なりキッカケが判然としない。これを描くことで苛めとの関わりの有無が鮮明になる。また興信所員兼アルバイトが探偵役になるが、ラストの月美との関係を表す伏線が弱い(この事件を格安で引き受けたことぐらい)。さらに月美の真偽の判定能力は一種の特殊能力のように描いているが、自分としては人に対する挙動の観察眼が鋭くなったほうが、より人間臭く魅力的に描けると思うが…。孤児院育ちを関連付けることが出来れば人間味を増すかもしれない、などが挙げられる。完全リアリティを求める必要はないが、ある程度の辻褄・納得性は必要だ。そうすることでバックボーンが明確になり人物造形に深味を増すことが出来るだろう。もっとも粗削りだが魅力ある公演があるのも事実だが。

    公演の全体観は好きで、物語の展開や描き方も悪くはない。表層的と思えるような苦悩も人によって深刻さが異なり、人の捉えどころのない曖昧な感情を掬い上げ描こうとする試み。何が本質的で普遍的かはそれほど重要ではない。観客それぞれの面白いと感じるところは違うし、その最大公約数を求めるような公演を続ければ、劇団コンセプトが揺らぐ。
    その上で、描きたい事(テーマ性)を明確に持ち、脚本は本当に必要な場面か、笑わすための繋ぎ場面(例えばサークル先輩OBとの遣り取り)なのかの区別(描き方の濃淡)、役者の台詞(大声が多い)の感情表現のメリハリなど辛口コメント(期待感を込め)はある。一方、真摯に公演に取り組んでいる姿(制作サイド等)も見ることが出来た。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/07/04 17:35

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