男女逆転〈マクベス〉 公演情報 ワンツーワークス「男女逆転〈マクベス〉」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ワンツーワークスを観る頻度もやや上がって来たような。今回は「マクベス」である。黒澤明『蜘蛛巣城』を含めると結構な回数この悲劇を味わって来たが、はっきり言って好きである。そして今回の舞台はこの作品の勘所はきっちり押えて、嘆きの言葉さえ聴く者を酔わせ、激情をかき立てる終始緩む事なき悲劇な物語に浸らせてくれた。
    経験の浅そうな若い俳優からベテランと思しい俳優まで、それぞれ役割を果たしている。次のシーンや行動へ弾みをつけるための抜かりない動機の仕込みがなされ、思う通りにボルテージを高めてくれるのを快く味わいつつ、悲劇的情緒に心を燃やすという、こういう罪な娯楽もないかも知れない。が、こいつが人間というものと自覚すべし。

    ネタバレBOX

    男女逆転、とある通り、女優の数が半端でない。先日の座高円寺での芝居も、「役」に女性が多く、それを男が演じて全員男性であった。今回は男として書かれた「役」を女性に置き換え、女は男に、という翻案である。それによって生じる文化人類学的な問題、例えば女が外で戦い男が家を守るという形について考察が始まる。「女系社会」というのは実際に見られる形なのだそうだが、男女の役割分担が異なることは「あり得る」事だと想定でき、「そんなもんだ」と思えば違和感なく見ることが出来てしまった。もちろん、疑問を持ちつつ検証しつつ舞台を観ることにはなった。そして見事クリア。徐々に「これが当り前の姿かも」と、錯覚し始めている自分がいた。
    特に最後の勝利の歓声は、女性が心底から発することで、男性が上げる声とは異なる純粋さが滲む。それは感動的である。女性が持つマイノリティ性という「現代」の感覚を投影するからだろうか。オーラスで剣を提げた女性戦士らが、前方を見つめて今に涙しそうに歓喜に震えるシーンがある。この場面、一般的演技になりがちなところ、古城氏の演出だろうか、最大級の感情表現をもって来させた。カタルシスである。
    その前段、例の(寝返ったとみられ、事実そうだった)マクダフの家族殺しをやらせたマクベスと、マクダフ本人の対決が最後の戦闘シーンでのクライマックスだが、妻もとい夫と子供達を虐殺された原因が、前王もとい女王の息子もとい娘の下に駆けつけたことにあると悟って泣く。この場面から最後の対決シーンまで、演じた山下夕佳が文句なしに「格好いい」と思えた。そういう役柄ではあるのだが。
    異性ゆえに、異性(女性)に対する心情でなく性を超越して凛々しく立つ姿に、素直に「すげえ」と思ってしまったが、本当に男女逆転した社会では、男性が女性に「惚れる」時、このような感情が生れるのではないかと想像させた。
    その日のトークでは女優3名が、「男性は何をやって暮らしているのか」という疑問をやはり持っており今も解消していない事を述べていた。演出には「そんな事は気にしなくていい」と一蹴されたとか。

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    2019/06/30 01:49

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