THE NUMBER 公演情報 演劇企画集団THE・ガジラ「THE NUMBER」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    個人の自由と幸福を両立させるのは、人類には不可能なのか?
    現代が「古代」になって伝説としか伝えられなくなった遠い未来でも、今もしきりに問われている全体と個人の相克は解決されていない。この舞台はロシアの作家の原作を鐘下辰男が脚色演出したガジラの舞台。私鉄沿線・八幡山の客席60人ほどの地下の小劇場だが、マチネから満員である。
    暗い舞台、細い照明、大音響の効果音、昔懐かしい千葉哲也はじめ、濃い目の俳優でそろえて、2時間20分休憩なし、ガジラらしい舞台である。だが、未来社会でも議論される科学か、芸術か、とか、幸福追求は全体か、個人か、というような内容はチャペックの古典とさほど変わり映えしない。SFはどこかで、いったん架空のお話として見てしまうとガジラ節でエグく押されても、観客は安心してしまう。そこが難しい。
    だが、小さいながら対面舞台で一つの世界を力業でまとめてしまう鐘下辰男の力量はたいしたものだ。さきに、体言止めの台詞が多くなったのに違和感を覚えたが、舞台に無機的な力を与える効果は大きいと分かった。しかしそれは台詞から情緒的なニュアンスを削ぐ。
    観客がSF社会の仕組みを、大音響の中で理解していくのにかなり疲れる。
    かつて、ガジラは終演後のカーテンコールがなく、暗転して客電がつくと、あとは裸舞台だけ、というのはなかなか味があった。この芝居はその方が良かった。

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    2019/06/20 22:44

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