時代絵巻AsH 其ノ拾四『紺情〜こんじょう〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 其ノ拾四『紺情〜こんじょう〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     この劇団の長所である歴史物語に見事に人間性が描かれている点がお勧め!!(追記2019.6.17)

    ネタバレBOX

     オープニング、村人に気遣われつつ、足の古傷が痛む老人が入場、間もなく身分の高い武士の一団が彼を訪ねてくる。筆頭は領主でぁる。彼らは関ヶ原の戦いで唯一の生き残りである老人に、偶然入手した鎧が本当に豊久が身に着けていた物か否かを鑑定して貰うと同時に往時の模様を知り為訪れたのである。何となれば、訪ねて来たのは島津家の者ではあっても養子であり、往時の様子を詳しくは知らず、薩摩武士としてその拠って立つ所をキチンと己の目と耳で確かめたかったからである。ところで、この導入部だけで実に多くの情報が観客に伝えられる。例えば、古傷という単語一つで老人が往時武士であり、而も一目見て領主を認識するくだりでは、領主側近の相当の地位に居た人物であることが伝わる。東京の人々にも分かるように相当デフォルメされてはいるものの、それは、薩摩弁で語られる物語として構築されており、遠い戦国末期の闘いに参加した九州最南端の雄藩・薩摩の領主、その弟や息子、そして主君に仕える忠臣らを通じて人の生き死にに、頼朝以来の武士としての矜りを受け継ぐ島津氏中にあっても中核を為す薩摩島津の親子・近親の情、友情や意地という形を採って現れる薩摩武士の矜りなど人間としての苦悩や生き甲斐を、闘いに賭けた生き様を通して描く。
     剣道に造詣のある人なら薩摩示現流のことは聞いたことがあるかも知れない。その修練の厳しさと威力は、彼らが練習に用いた木々が立ち枯れた話や用いた木剣が折れた話など数々の逸話にその打ち込みの鋭さと威力が如実に現れている。日本刀で何かを切った経験を持つ人なら、その凄まじいまでの切れ味には、心底背筋がヒヤリとするような慄然たる感覚と余りの切れ味にヒリヒリするような快感を味わったことがあろう。その切れ味の鋭さは、腕くらい切り落したところでホントに殆ど手応えは感じまいと思わせる。それほど切れ味の鋭い刃物であるから刀同士がぶつかり合うような立ち合いは殆ど無かったと考えるべきであろう。(刃こぼれが酷い、ヌンチャクなどで側面から叩かれれば折れやすい等の理由から)まあ、示現流の一の太刀を刀で受けたらそのまま折られ真っ向唐竹割という結果になろうというもの。また、保守的傾向の強い九州にあって薩摩気質は、他人のしないことにチャレンジしたりリスクを取ること、取って果敢にチャレンジすることを尊ぶ精神がある。明治の幕を開けた二大雄藩に薩摩藩が名を挙げるのは今作で描かれたような経緯があったと考えたい気になるのも、維新の評価は様々にあろうが納得のゆくものではある。
     また、関ヶ原の戦いに於ける豊臣方敗戦の原因として流布されている小早川の裏切りについても、ここでは好い加減な裏切りと捉えず、武士の残すべき二つの価値即ち、所領と家名を残す戦略・戦術の一環として捉えている点も興味深い。

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    2019/06/16 12:07

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