幸せのかたち 公演情報 + new Company「幸せのかたち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「待つこと」「思いを伝えること」、何となく矛盾したような行動にある共通点...それはどちらも自分の意思表示であり愛を示す行為である。
    登場人物全員が善人で、この店に集うことによって癒され優しくなれる、そんな喫茶店フュージョンでの心温まる物語。
    (上演時間1時間40分) 【FLOWERチーム】

    ネタバレBOX

    セットは、客席に対して斜めに喫茶店内を作る。上手側がテラスになっており、この公演のテーマと言えるカランコエの鉢植えが置かれ、その後方に木が植えられている。中央に丸テーブルと椅子、下手側に店の出入口とカウンターがある。全体が2段ほど高く設えているが、店の周りは1段低くして街路イメージ。

    物語は店員の まなみ(生粋万鈴サン)の観点で展開する。何の変哲もない暮らしの中に幸せがある、そんな足元を見つめた珠玉作。
    まなみは恋人が海外に行ったきり帰ってこない。それでも彼を信じて待ち続ける。一方そんな彼女に思いを寄せる郵便局員ピンさん、それから大学生の愛やすずの切ない恋愛話、地域の話題店を取材する記者等が織り成すヒューマンドラマ。この店に集う人々を優しく見守る店長、その店長にも辛い思い出が…。

    この公演に温かみを感じるのは、思いを伝えるのが手紙という手段を用いているところ。現代のインターネット社会では、メールという手軽な手段で伝達できる。送信し一定の時間内に返信がなければ落ち着かなくなり、場合によってはイラッとしたりする。スピードが求められる社会にあって、この公演は待つ=大らかな気持ちでいることの大切さを伝える。一方、身近に恋愛相手がいる場合は、自分の気持ちを素直に伝える。自分の気持ちを押し込め蓋をしない。大学生2人のそれぞれの恋愛模様に まなみが実直なアドバイスをするが、それは叶わぬ自分の身の上の裏返しの行為。またラブラブと思われていたカップルが些細なことで喧嘩別れすることに。そこには相手を慮る気持ちで溢れている。愛、幸せのかたちは人それぞれ違う。
    店長は妻に先立たれ、2人の子供(兄・妹)の面倒を見ながら働いている。父に負担をかけないようにしているのか、兄は妹の面倒を見るという建前で小学校に行ったり行かなかったり。この兄・妹が亡き母の思い出であるカランコエの花に水を注す。子供や動物が登場する映画には敵わないと聞くが、本公演も子役の素晴らしい演技が光る。

    舞台美術も素晴らしいが、劇中歌や優しく流れる音楽。人物の心情表現としてのスポットライト、暖色彩の諧調照明も心温まる雰囲気を表す。
    これら全ての喫茶店での出来事を小説に、その物語を劇中劇にしたような気もするが…。
    最後に、カランコエの花言葉...「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「あなたを守る」「おおらかな心」、全てがこの公演に当てはまるような。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2019/06/15 11:25

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