満足度★★★★
死を意識したはずの男たち(『男亡者の〜』)、女たち(『女亡者の〜』)のジタバタをコミカルに描く二人芝居二本立て。
エレベーターの事故で出会う元同級生、自殺幇助業者との意気投合……と、設定は不自然なのにもかかわらず、いつの間にか彼らの不満や不安に共感してしまったのは、戯曲にも演技にも、飛躍を楽しむ余裕と日々の生活に根ざす誠実な眼差しとが同居しているからだと思います。特に『男亡者』に登場する「幸福の金魚」など、現実界とはレイヤーの異なる「不条理」を仕込む脚本には、リアルとファンタジー、主観と客観を行き来する面白さを感じます。
「死」をモチーフにはしていますが、湿っぽさはなし。『女亡者』の二人の連帯はたくましく、『男亡者』の二人の動揺ぶりは切なくもいじらしく、どちらも生きていく力を感じさせるものでした。『女亡者』の舞台は一人暮らしの部屋で、アクション風の場面もあり、ダイナミックな印象。一方『男亡者』はエレベーターの中ということで、ごくシンプルな舞台で二人の芝居が展開されます。芝居そのものは丁寧で大人の悲哀を存分に感じさせてくれるのですが、それだけに舞台の広さ、間の長さを感じる場面もあり、もう少し思い切った緩急、空間の作り方があってもよかったのかなとも思いました。