満足度★★★★
初めての団体だったが、はっきり題材で観劇を決めた。
川島雄三をよく知るとは決して言えないが『幕末太陽傳』には故もなく入り込んだし、晩年に撮られた洒脱な『しとやかな獣』『女は二度生まれる』や『貸間あり』『雁の寺』等のメジャー所よりは『洲崎パラダイス赤信号』、次いで『風船』(TSUTAYA様様)に、映画監督・川島雄三の凄みが表われていると私は感じる。
閑話休題。舞台はその「幕末太陽傳」撮影現場を借りて、当時の映画界と川島その人を捉えようとしていた。初めて見る作・演出者だが中々、面白く観る事ができた。川島は評伝の主人公になりがちな人物ではあり、その代表的作品の一つである「幕末・・」を使ったのもベタに思えるが、役者陣の好演もあって張りのある舞台ではあった。事実として浦山桐郎や今村昌平が居た現場で、銀幕の舞台裏話としては比較的知られた類なのだろうが、史実をなぞる快さがある。そしてこの史実(単なる事実)に投げつける作家独自の台詞の中にヒットもあり、舞台は生き生きと今を呼吸していた。
何より川島雄三「らしさ」(私は写真でしか知らないが)を彷彿とさせる主役の佇まいは、他の人物とのコントラストもあって大変特徴的、不思議な構図であった。他の人物もキャラに即した役者を揃え(今村は実際あの顔だった気がしてきたし浦山には細身の辻井氏を当て写真で見る帽子を着用)、人物の絡ませ方のチョイスも中々よく、要所に絞りながらこの題材を一通り舐めたと思わせた。
演技的にもう少し幅を持ちたい部分もあったが、言葉足らずながら川島雄三の「軽佻派」たる所以を伝えてくれていた。