満足度★★★★★
初演と同じ芝居とは思えない。舞台の明度、風景、台本の構成、演技、どれも熟成され洗練され、深まり、冒頭から引き込まれて最後まで一人の劇作家というか、自身と向き合い何かを追い求めた一人の人間を、その同伴者を、彼に連なった者達の存在を感じ味わう2時間10分だった。「あの『山の声』を書いた人の話」を超越して、たまさか演劇をやる事になった人間の魂(と名づけるなら)の足跡、大竹野正典なる人物の人体に宿った魂のあり方の軌跡が描かれている。作品として焦点化される『山の声』は、遺作ながら彼の人生の通過点としてしっかり捉えられて説得力がある。固有名詞から普遍へ、深化した同作に拍手である。
「お前何で芝居やってんねん」のくだりで漸く初演を「観た」感覚を思い出した。